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そのあまりにも取り繕えていない逃亡劇を見送りながら、その後ろ姿に感じるところは、ただただかわいいの一言に尽きた。
次の約束を取りつけようとしたら断られ、好きだと告白したら逃げられた。
結果だけなら最悪なはずなのだが、ちっとも最悪な感じがしない。
だって、そんな反応を返されて、諦められるわけがないではないか。
雨宮は黒田の言葉をよく吟味した。
好きと言ったら、無責任に簡単に言うなと叱られた。
「……つまり、もっと何度も熱烈に想いを伝えろってこと?」
黒田の言葉を分析するとそうなる。
なるほどそうか、と雨宮は顔をにへっと緩ませた。
そう、きっと課長は自分を試しているのだ。本気なら時間をかけて熱烈に迫ってこいなんて、情欲の深い人なんだ。さすがマゾ!
と超前向きに解釈すると、まるで告白が成功した中学生のようなテンションでアパートに帰った雨宮だった。
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