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黒田は入り口付近に座っていたので会議を邪魔することもなく、実にスマートに温度調節を終えて席に着き、ちらっと雨宮の方を見た。
寒がってるの、気づいてくれたんだ……!
あの周囲に気のいかない黒田が、ちょっかいかけてないのに窮地に気づいてくれたという驚異的進化に、痺れるような感激が押し寄せる。
これってもしかして、俺が思ってたよりすごい好意的? ていうかもういつでもOK?
嬉しくて嬉しくて感謝の笑顔を向けると、黒田は不意を突かれたのか、かぁっと頬に朱を散らした。
うわその顔大好きと喜んでいると、すぐに眉をしかめられ、そんなことはいいから仕事に集中しなさいと手元のノートパソコンを指されてしまった。相変わらずつれない態度だがそれでも嬉しくて、雨宮はのりのりで仕事に臨めた。
「課長」
会議後、ノートパソコンを抱えて黒田を小走りで追いかけると、黒田は立ち止まって雨宮を振り返った。
うわ、待ってくれてる……!
それだけで胸がいっぱいになりそうだった。走りながら妄想はビッグバン的に膨れ上がっていく。
『さっきはありがとうございます』
『いや、君が風邪を引かなかったならそれでいいんだ』
『俺が風邪を引いたら困るんですか?』
『い、いや、それは……』
『課長、俺、わかってます。課長の気持ち』
『雨宮……』
『今日、一緒にご飯どうですか? さっきのお礼もしたいので』
『し、しかし……』
『課長が嫌がることはしませんから』
『……そうか。それなら』(はにかむように笑う)
これだ、もうこれしかない……! いざ世間話で太陽作戦!
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