06 振られてしょぼん。だけど課長は優しくて?

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 ……いや待て、落ち着こう。  止まりそうになる心臓をなんとかなだめながら、雨宮は深呼吸をした。  住民税は四回に分けて払えるので、とりあえずは六月末までに一回分を振り込めばいいのだ。今すぐ破綻というわけではない。  そう気づいてひとまずほっとするものの、月末に無職になるタイミングでこの請求とはついてない。精神的には課長に振られたことも合わせてトリプルパンチだった。 「神様、俺が嫌いですか……?」  さすがの雨宮も、これにはがっくりとうなだれるしかなかった。  昼休み、雨宮は急場しのぎに作ってきた弁当を食べていた。  少しでも節約せねばと思ったのだが、弁当を作る習慣がないのでおかずはかなりわびしい。ついでに言うと、さっき雨の中、わざわざ銀行に行って住民税の一回分を払ってきたので、財布も危機的にわびしい状態だった。  とりあえず土日に単発バイトを入れたので、そのバイト料が入ってから住民税を払ってもよかったのだが、月末までの債務があると思うとどうにも落ち着かず、勢いで払ってしまった。  弁当を食べ、歯磨きをしながら、考えていたのは今後のことだ。  今月分の給料が来月振り込まれたら、それで収入は途絶える。今までの会社での生活が終わってしまう。ほんとにクビになっちゃうんだなと今さらながらに実感していた。  もっと、ここで課長と一緒に働きたかったなぁ……。  そんな思いが込み上げるのを振り切りながら歯ブラシを片づけ、雨宮は文房具置き場になっている倉庫部屋に向かった。午後一で会議資料を大量に印刷するので、それを綴じるダブルクリップを取ってくるためだ。
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