不幸の手紙を出してみた

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不幸の手紙を出してみた

恋人ができたから紹介したいし祝ってほしい。という連絡がきたとき、俺は最初は断った。弾んだ、楽しそうな幸せ絶頂ですみたいな声に腹が立った。というのも俺こと戸口トビラはつい最近失恋したばかりだったのだ。恋をした相手にはヤンキーみたいな彼氏がおったとさ。こえー。告白なんかしてたら「やだー、こいつきもーい。やっちゃってよー」「てめえ俺の女に何してくれてんだよ」とかなんとかなってぼこられたかもしれませんね。偏見かもしれませんが…… そんなわけだから。 「そういう、恋人紹介とか祝うとか、そういうの今無理」 電話越しに冷たくあしらった。 けれど、本山守(もとやままもる)は引かない。 「いやいや、そう言わずにさ。ぜひさ。幼馴染なんだからさ」 「関係あるかね」 「なくても。ちょっと面白い話なんだよ、これが」 「面白い話?」 「不幸の手紙を出したらさ、恋人ができたんだよ」 俺は一瞬フリーズした。 不幸の手紙。遠い遠い昔、小学校ではやった気もする。俺たちが生まれる前頃全盛期だったとか。棒の手紙の話を親から聞いたことがある。笑っちゃうぜ。全盛期ほど流行ってはいなかったが、それでも小学生の頃はあった。それが中学以降になると不幸の手紙はメールに成り代わり、今ではラインだ。 それが今時、不幸の手紙。 「ちょっと面白そうだな」 そう、うっかり口にしちゃったのがそもそもの間違いだったのかもしれない。電話越しに本山が嬉しそうに笑うのがわかった。 「だろ。おまえが好きそうな話だからさ。会いに来いよ。鍋パしようぜ」 「そちらのおごりならぜひ」 「もちろん」 図々しく頼んでみたのに、本山は気前がいい。万年金欠の俺からしたらなんともうれしい。今月も本を5冊も買ってしまい、明日から何を食べて生きようかなと悩んでいたところだったのだ。 「宮がはりきって料理してくれるからさ」 「みや」 「そう。宮浩太(みやこうた)」 事もなげに本山は言う。言うが、うーん、うん?
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