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「ーー佐藤さん、どうもありがとうございました」
「いえ・・、まさかこんなことが起こるなんて・・わ、私も想像もできなかったので・・」
佐藤の声は、動揺を隠して話しているのが明らかな程に所々に小さく途切れた。
「まあまあ、佐藤さんの話を聞く限り疑う点はないのでご安心ください。ただ、私どもも皆さんにこうして聞かなければならないので」
男は佐藤を気遣うような小さな笑みを見せて言った。そして、連れの男に「・・おい、あと何か聞くことあるか?」と低く小さな声で尋ねると、その連れは小さなノートを確認した後、「いえ・・、特にはないですね」と返した。
「それではまた何かありましたら電話等させてもらうかと思いますので、その時はご協力よろしくお願いします。
それともし何か情報がわかったときは何でもいいのでご連絡いただければと」
「わかりました。
私も里美とは恋仲だったので、犯人の目的がわからない以上は不安ですので・・」
「もし危険があれば遠慮なく110番を」
「ーー里美、夕飯は?」
「あー・・、大丈夫かな。後でお腹すいたら食べるから」
「何でもいいからちょっとは食べなさいね。悩む体力もなくなっちゃうわよ」
里美はソファーに横になってスマホを扱いながら、時に起きてミルクと砂糖多めの冷たいコーヒーをストローで飲んではまたしばらくしてソファーに横になることを繰り返していた。
「・・けっこう時間かかってるみたいだな」
里美が二階の部屋に行った後に、里美の両親はリビングで言葉を交わしていた。
「そうね・・。でも、佐藤くん所の家の事情を考えると仕方ないかもね。佐藤くんも不本意だったみたいだし・・」
「里美も佐藤くんと付き合って長かったからな・・。まさかこの歳になって家の事情か・・。
俺にもっと社会的な地位があればな・・。自分の能力の無さを恨むよ」
「そんなことないわよ。たぶん、あなたに社会的な地位があったとしても結末は変わらなかったと思うわよ。
私も詳しくはわからないけど、こうなるようになってたのよ・・」
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