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自分
朝起きた時に世界が壊れていればいいのにと願った日。
よく晴れていた。鳥が大きく伸び伸びと羽ばたく青い空には、消えたいなぁと考えている僕に見せつけるように雲が優雅に流れて行く。
上司命令で売れる見込みのない新商品のプレゼンに向かわなければならなかったそんな日に、
僕は自分のドッペルゲンガーに出会った。
「え。」
陸橋を渡っていると対面から僕と全く同じ顔をした人間が歩いてきた。
初めは見間違いだと思っていたが、
近づくにつれ目の前に鏡があるのではないかという疑問に変わり、
ついに目と鼻の先に立ち止まった時にようやく目の前に自分と同じ人間が存在している事がわかった。
「誰?。」
同じ顔をしたソレも僕と同じように驚いていた。
驚いた表情も、どう見ても自分だ。夢の中で俯瞰して自分を見ているような。
「そっちこそ誰。」
ソレは僕に言った。
声まで同じである。
この現象、なんか聞いたことある。
姿形が自分と同じ人間が目の前に現れる現象。
…ああ、そうだ、
「「ドッペルゲンガー。?」」
僕の声に合わせてソレも言った。
合わせてというより、たまたま合ったというべきか。
それとも合うべくして合ってしまったのか。
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