郵便配達員の手紙

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仕事を終えて部屋に帰り湯船に浸かっても、老人のあのくしゃりと微笑んでいる様が頭から離れない。 「私にはパソコンだのケータイだの、ハイテクなものは使えねぇ。だから、手紙がわかりやすくて一番だ」と感謝された事も脳裏をよぎった。あれほどの年代だと、慣れ親しんでいるのは手書きの手紙なのだろうか。きっと電子メールやメッセージのように読むだけのものでなく、手元に残る安心感もあるのだろう。 風呂から上がりパジャマに着替えると、仕事終わりに買ってきたばかりの便箋を机の上に広げた。 昔はそれなりだったが、今となっては綺麗な文字は書けなかった。それでも、不器用な文字で綴り始めた。 「お父さん、お母さんへ。元気ですか?僕は、元気です」
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