1人が本棚に入れています
本棚に追加
仕事を終えて部屋に帰り湯船に浸かっても、老人のあのくしゃりと微笑んでいる様が頭から離れない。
「私にはパソコンだのケータイだの、ハイテクなものは使えねぇ。だから、手紙がわかりやすくて一番だ」と感謝された事も脳裏をよぎった。あれほどの年代だと、慣れ親しんでいるのは手書きの手紙なのだろうか。きっと電子メールやメッセージのように読むだけのものでなく、手元に残る安心感もあるのだろう。
風呂から上がりパジャマに着替えると、仕事終わりに買ってきたばかりの便箋を机の上に広げた。
昔はそれなりだったが、今となっては綺麗な文字は書けなかった。それでも、不器用な文字で綴り始めた。
「お父さん、お母さんへ。元気ですか?僕は、元気です」
最初のコメントを投稿しよう!