5話、天使のようなメイド

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5話、天使のようなメイド

5話、天使のようなメイド 翌朝。 小鳥の囀りで目が覚めると、汗と精液で汚れたシーツと身につけていたバスローブは綺麗になっていた。 きっとルーポか、クルソニーとかいう あのいけ好かねぇ執事がやったんだろう。 それにしても、尻に異物感があるし頭も痛い。 体調はどちらかというと優れないほうだ。 「失礼します」 ルーポの声だ。 オレはヤツを警戒して返事はしなかった。 「返事が無いようですね…」 「ルーポ様、如何なさいましょうか?」 「そうですね、ではお願い出来ますか?」 「は、はい!畏まりました!」 ルーポはもう1人誰かを連れてきたようだ。 クルソニーとはまた違う使用人か? 女の声だから明らかに違うな。 お、女!? 「ちょっ、ちょっと待て!!」 オレは必死に起きたばかりのバスローブのハダケを正した。 「失礼致します」 案の定メイドが1人入ってきた。 「え、えっと…。初めましてヴォルフさん、私はメイドのアーデルハイトと申します」 アーデルハイトと名乗ったメイドはそう言うとスカートの裾を掴んで挨拶をした。 惚れた。 いや、それが事実なのかはわからねぇ。 ストロベリーブロンドと言うべきなのか? 薄い桃色の髪をしている。 一見 派手で俗のような外見だが、気品がありどことなく素朴さを覚えた。 一目惚れというヤツなんだろうか、オレは一目見て アーデルハイトに釘付けになった。 「おやヴォルフ、どうかなさいましたか?」 「ル、ルーポ!? ノックぐれぇしろよ!」 「ちゃんとしましたが?」 オレがアーデルハイトに見惚れてルーポの存在が気づかなかったというのか!? チッ…、調子が狂う! アーデルハイトはティーセットを用意してオレに紅茶を淹れようとしている。 「おっと、茶は飲まんからな!」 「えっ…」 アーデルハイトはショックを受けたかのように、両手を自分の口に折り重なる。 そ、そんなつもりじゃねぇ! 元はといえばアイツがミルクティーに媚薬をブチこんだのがいけねぇんだ! 「どうして…ですか…?」 「ど、どうしてって…」 とてもじゃねぇがこんな生娘に媚薬を盛られてケツ掘られたなんて言えるかよ! 初対面であるコイツの心を傷つけないためと、男としてのプライド的にもだ。 「昨夜、僕が出来心でミルクティーに砂糖を沢山入れてしまったのです。それからというもの、ヴォルフは紅茶に警戒心を示しているみたいですね、クスクス…」 ルーポは不敵な笑みを浮かべて謎のフォローをした。 なお、入れたのは砂糖ではなく媚薬だけどな。 「良い香りですね、これはダージリンのアールグレイでしょうか?」 「はい!隣のルビーン領の専門店で取り寄せたアールグレイでございます」 「おやおや、どおりで僕らの領地の茶葉とは一味違うと思いましたよ」 「うふふ、ルーポ様にお気に召されて光栄です!」 ルーポはオレを他所にアーデルハイトに話しかけて会話を楽しんでいた。 クソッ…、良い雰囲気になりやがって! 「ヴォルフ、もう悪戯はしていませんから安心してお飲みください」 ルーポは紅茶を一口飲んで微笑んだ。 まさか、毒味して媚薬が入ってないのか見せつけているのか? そんなことよりも、アーデルハイトがどこか悲しげな顔をしている…。 「わーった!飲めばいいんだろ?」 オレはアーデルハイト……じゃねぇ!、アールグレイとかいう紅茶を一口飲んだ。 クソッ!アーデルハイトといいアールグレイといい、似たような横文字ばっかで覚えづらい! 「いかがですか?」 アーデルハイトがそう聞いてきた。 正直に言おう、マッズ! いや 決してコイツが淹れた紅茶が悪いわけではないと思うが、オレの国の臭いがキツい下痢止めでも入っているのだろうか…? その独特な味はオレの舌には合わないようだ… だが目が覚める一杯ではある。 またアーデルハイトがオレの様子を覗いてくる。 クソッ!なんなんだよ もう! こうなったら、もう飲みほしてやる! オレはその紅茶をグイッと飲みほした。 「ありがとうございます!」 そうすると、アーデルハイトはどこか嬉しそうに微笑んだ。 ありがとうじゃねぇよ、何度も言っているようだが調子が狂う! 「アーデルハイト」 「はい、ルーポ様!」 「兄上にも紅茶を持って行かなくて大丈夫ですか?」 「ハッ!。も、申し訳ございません!。それでは、私はこれで失礼しますね!」 そう言うとアーデルハイトは慣れた手つきでティーセットを片付けると部屋を後にした。 この そうめん頭!横槍を入れやがって! ルーポはアーデルハイトを見届けると、すぐさまオレに近づいて顎をグイッと掴むと自分の方に向くように引き下げた。 「な、なんだよ…」 「あの娘、見目麗しいでしょう…?。クスッ…美醜を見極める眼は 君たち東洋人も変わらないのですね、悲しいです」 ルーポのネットリとした声色に、オレはフとコイツに抱かれた記憶を思い出して身体をビクつかせる。 またケツを掘られると、認識したのだろう。 「君、アーデルハイトに一目惚れしましたか?」 「ハ、ハァ!?」 ルーポの図星な回答にオレは思わず狼狽えた。
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