邂逅

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 昼休み、圭太は校庭を散策していると、「ちょっと君!」と言う女の人の呼ぶ声が児童の歓声を縫って風の便りの様に聞こえて来た。彼は、「僕の事かな?」と思って声のする方を見ると、つかつかと女の人が駆け寄って来る。そして一歩近づくと、「えっ?!」と思い、亦、一歩近づくと、「あれっ?!」と思い、亦、一歩近づくと、「うそ?!」と思い、亦、一歩近づくと、「まさか?!」と思い、到頭、狐につままれた心持になった彼の目の前に女の人はやって来るや、声を弾ませて言い放った。 「あっ!やっぱり良原君じゃないの!」 「え~~~~~!」  圭太は天地がひっくり返る程の衝撃を受けた。なんと咫尺の間に向かい合ったのは転校前の小学二年の時に担任だった、大好きな佐竹美智子先生だったのだ。まだ27歳と若く佳人と呼べる程、綺麗でトレードマークの切れ長の目を三日月形にして優しく微笑みながらそのほんわかとした息吹に合わせるかのように襟元や胸元にふんだんにフリルをあしらった純白のリボンタイ付きブラウスを身に纏い、それにグレーと黒のハウンドトゥースチェックのテーラードスカートスーツを組み合わせ、絶妙にきりりと決めていた。
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