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星の数で飲食店を評価するグルメサイトがある。最低で星が一つ。最高で星が5つだ。僕の店は星が3つだ。深里も僕も料理はからっきし、不得手だ。冷凍食品を電子レンジで温めて出すシステムだ。
そのおかげで、多くのメニューがあり、近所に飲食店が少ないこともあり、繁盛している。
角地にある警察署を曲れば、広い道路に面した店の看板が見えた。臨時休業した店の駐車場に車は入って行く。
隣は警察署と消防署だ。先祖代々この場所に広い空き地を持っていた。亡くなった親父が、骨董品好きだった。金に困って、両端の良い場所だけ売ってしまったのだ。
親父が亡くなって土地を相続したが、両脇が昼夜を問わず、緊急車両が出動する場所で、売り手がつかなかった。僕は、思い切って店舗兼自宅にした。
洋食、和食、麺類もあるレストランだ。多くのメニューをお客様に提供するには、冷凍食品の活用が必要だった。
幸い、お隣の警察署員や消防署員のお客様も多い。
「私が荷物運んでおくから、あなたは家で休んでて」
「ありがとう」
自宅から店に繋がるドアを開く。店内では、瓶を接着剤で固定して、壁際の骨董品類の横に置いた。翌日からの仕事に備えて、早めにベッドで横たわる。深里が、すっぴんで隣のベッドで座る。僕は起き上がる。
「ボクシング引退したから、夜間課程の調理師専門学校に通おうと思うんだ」
「え?」
「いつまでも、ご飯炊くのと、トースト焼くのとゆで卵作れるだけじゃダメって思ってたんだ」
「学校通ってる間は、夕食で込む時間帯よ。お店はどうするの?」
「それはバイトさんをお願いして」
「隠れてジム通いしないなら、いいよ」
すんなり過ぎるが、僕がボクシングの試合後で優しくなっているのだろう。
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