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名もなき者のためのレクイエム
カプチン・フランシスコ修道会の地下納骨堂。そこには約八千体のミイラが眠っていると言われる。そのカタコンベにおける第一体目のミイラは一五九九年に没した修道僧と言われていて、内部は基本的に性別や社会階級などのカテゴリで分けられて安置されている。
右を見ても左を見てもミイラだらけなのだから、あまり万人受けするような場所ではない。それは私も例外ではなくー…。
「うわー…。写真で見るのと全然迫力が違うぅ…」
ビビっていた。正直に言うと今すぐ引き返したい。不気味すぎる。
内部は照明がついているから比較的明るく通路も確保されているので歩くことに支障はない。だが、やっぱりどこを見てもミイラというのは不気味すぎる。骨だけの者、微かに頬の膨らみや顔付きが残っている者、ましてやそのミイラ達は生前の服を身に付けているのだから、気を抜くとそのまま魅入られてしまいそうな気さえする。
「うぅー…やっぱりやめておけばよかったかなぁ…でも、ここまで来たら見たいよなぁ。…ミイラ少女」
その日は他に観光客がいないのか、内部には一人きりだった。それが余計に不気味さを引き立たせた。
彼の少女が眠っているのは他と区別された場所。聖ロザリア礼拝堂と呼ばれる場所。そこに生前の姿を残したミイラの少女が眠っている。
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