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喰ってやるよ。
喰ってやる。
そう言いながら、そいつは私の中から這いずり出てくる。
戻れ戻れと、そいつを自分の中に押し込もうとするけれど、そいつはどんどん力が強くなり、私の押し込こもうとする手を喰ってしまった。
ドス黒いそいつと戦おうと、綺麗な呪文をいくら唱えても、そいつの前ではそんな軽い呪文はティシュペーパーの様に薄っぺたくヒラヒラとそいつに引っ付くだけで、鼻をかまれて捨てられてしまう。
喰ってしまうよ。
喰ってやる。
本当は私に喰われたいんだろ?
そういってそいつが私の前で大きな口を開けてくる。
そいつの口の中はドブ臭く、唾液であろう粘着質な黒光りした液体がトグロを巻いている。
喰われて仕舞えば楽になるのだろうか。
楽になりたくなった私は戦う事を諦めて、
そいつの言うがままに。
そいつの思うがままに喰われていった。
喰ったよ。
喰ってしまったよ。
そいつは馬鹿にしたように、ケタケタと耳障りな笑い声を響かせる。
私は、そいつの腹の中で我が身の奥までドブ臭い匂いを染み付かせて、黒光りした粘着質の液体の中でもがき苦しみ泣き叫ぶ。
喰われたのはお前が望んだ事だろう?
そいつはまたケタケタと耳障りな笑い声を響かせて……。
私の姿で平然と
私の日常を過ごすのだ。
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