空白の過去

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空白の過去

 物心着いた頃、ボクはずっと書斎の一室にいた。窓には柵があり扉は外から鍵が掛けられた密室だった。そこにボクは閉じ込められて満足な食事も与えられていなかった。ボクの父は医者でボクが死なないように3日に一度だけ点滴を施し監禁していた。この頃、ボクの世界は書斎の大量の本と窓からうっすら見える変わらない景色だけだった。この頃はまだ幸せな方だった。本当の地獄はボクが小学校に入学してからの事だ。  幼い頃、ボクは書斎の本を読み込み毎日を過ごしていた。ボクの母は家を空けることがほとんどでボクとの時間は短かった。母はイギリス人で科学者だった。本当にたまにだったが、母はボクに外の世界の話をしてくれたり食事を作ってくれたりした。ボクが初めて食べたのはミートパイだった。母は西洋の料理だけでなく日本料理も勉強し食べさせてくれた。母との時間は本当にわずかで幸せな一時だった。そんな母との別れは壮絶なものだった。  8年前、父はかばうようにボクを抱きしめる母をボクの目の前で何度も包丁で刺し続け殺害した。その後、サイレンの音と共に姿を消した父は行方不明となりボクは天宮家の養子になった。  ボクはハーフで、昔から肌の色が白く小柄で茶髪のショートヘア姿をしている。容姿は母に似ていて性格は父に似ていた。その為か小学校に入って直ぐにいじめに会うこととなる。何度も生死をさ迷うようないじめに・・・。  8年前のあの日まではボクには母だけがボクの味方で父もクラスメイトも学校の先生さえもボクを敵視し苦しめて来た。今では彼らの顔も思い出せないし思い出そうとも思わない。それでも、ボクが父の影にずっと怯えているのは事実で父が逮捕され父から解放されるのを願っているのかもしれない。だから、ボクは探偵になったんだ。
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