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別れと出会い
ボクが小学校に入学してから父と母はボクの事で良く口論になった。ボクは学校でいじめられ家では監禁される。そんな生活が2年以上続いた。
ある日、書斎に突然現れた父の手には包丁が握られていて「お前はもう必要ない。」と言いボクに襲いかかって来た。一瞬ボクは驚いたが死んでも構わないと思い目を閉じた。ああ、結局ボクは幸せのカケラを見つけられずに死ぬのだと全てを諦めかけた。その瞬間、誰かに抱きしめられる感触を感じ目を開けると父が突き出した包丁はボクを抱きしめる母の背中に刺さっていた。「なんで・・・」ボクは無意識に呟き母は苦しそうに答えた「だって、あなたは私の大切な宝物だから。今まで助けてあげられなくて、ごめんね。愛しているわ、レイ。」これが母の最後の言葉だった。父は「邪魔だ!退けろ!」と叫び母を何度も刺し続けた。その時のボクは「やめて、やめてよ。」と恐ろしいモノを見たような震えた声で母にしがみついていた。
どのくらいの時間がたったか分からなかったが書斎での惨劇は外のサイレンの音で幕を閉じた。父は包丁を放り出しどこかへと消えて行った。書斎には母に抱きつき放心状態になったボクと生き絶えた母だけが残され、その後直ぐ来た警察がボクを保護した。なぜ父はボクを殺そうとし母を何度も刺し続けたのか?その理由はまだ分からない。ただ言えるのはこの時、ボクは全ての希望を失ったということだけだった。
母が亡くなり生きる目的を失ったボクだったが警察署で出会った今のボクの父、天宮康介に気に入られ養子として引き取られた。康介お父様にはボクと同い年の息子の守がいてボクの義理の兄として接している。
天宮家の養子になって直ぐにボクは教育の為執事の春日と共にイギリスに行くこととなる。そこでボクは春日から厳しい英才教育を受けるがそれが空白の過去を乗り越える良い機会となった。ボクはイギリスで春風彼方と彼方の双子の姉の和歌菜に出会い初めて友達ができた。
高校1年生になり日本の学校に転入した後もクラスのみんながボクを受け入れ沢山の友達ができた。やっと訪れた幸せだった。
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