すれちがい

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差出人の名前がなくても誰が書いたものなのか分かってしまった。 記憶の儚さは残酷だと思っていたが、手紙によって今までに感じたことのない優しさに包まれた気がしたのもたしかだ。 あなたが全ての記憶を思い出したわけではないのが唯一の救いかな。 本当は私なんか忘れて幸せになって欲しい。 やはり神様は何を考えているのかつかめない。 もう会えるはずなんてないのに... 生まれ変わって再びあなたに会うには少しこの世にとどまりすぎてしまったみたい。 だけどあの時あなたを守れてよかった。 もう見守ってなくても、そばにいなくても大丈夫だよね。あの時本当はどうするべきだったのかどれほど考えてもやはり答えは出ない。私の行動は正解だったかな? 何十年ぶりかに流した涙は少女の頬を濡らした。 街のはずれの駅のホームからこの街を何百年も姿を変えずに見続けてきた少女は,手紙を届けてくれた少年と共に居るべき場所へようやくかえっていった。
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