Prologue

1/1
前へ
/29ページ
次へ

Prologue

 この世界に来て早半年、魔王として転生したが、この全て思い通りになる力というのは何とも形容し難い愉悦感がある。社畜として上司に頭を下げ、取引先に頭を下げ、妻に頭を下げ……思えば自分のミスでもないのに謝ってばかりだった。  しかしだ。上司に大量のコーヒーをかけられたことをきっかけに異世界へ転生し、この魔城、レイフォンド・リングルデルク城の当主となった。勇者の訪問も多く、自分に戦いを挑んでくるが、指を鳴らすだけで勝ててしまう。なんの面白味もない。弱すぎるのだ。 「マグリード様、親衛隊長らが揃いました」  執事であり吸血鬼のフェルナンが頭を下げ、そう報告した。 「ありがとうフェルナン。すぐに向かうよ」  マグリード・リングルデルク。それがこの世界に転生した時咄嗟に付けた名だ。一つのこの寂れた城を再建し、自分ができる限り戦闘能力に秀で、忠誠心に溢れる者たちを最高幹部、そして、この城を守る親衛隊長として作成した。全員レベルはMAXの100。個性的なスキルや能力にしたせいか、非常に性格面での個性が強くなってしまった。  集まった親衛隊長らを前に、マグリードは一つ咳払いをした。親衛隊長らは跪いている。 「マグリード様、我々親衛隊長六名、御身の前に参上した次第でございます」  参謀、レンシェルはかしこまった口調で報告すると、マグリードはうむ、と頷いた。 「我々の最終目的である世界征服に向け、着々と準備を進めてきたお前たちには、感謝の気持ちを伝えよう」  親衛隊長の皆の顔がパッと晴れる。 「とんでもございません。貴方様のお役に立てるのなら、どのような事でもさせていただきます」  レンシェルは頬を赤らめながら深々と頭を下げた。レンシェルは黒い髪を腰まで伸ばした美女で、綺麗系と可愛い系が混ざり、しかも巨乳という男の要望を全て答えるような悪魔だった。 「しかし、まだホーリーラジェントは我が手中に一つしかない。これではまだ世界征服など夢のまた夢……。その辺はどうなっている」 「申し訳ございません。我々も捜索を続けているのですが、所在はまだ」  ふむ、とマグリードは顎をさする。 「仕方ない。引き続き捜索は続けよ。一月後までに、私の魔法で全世界の魔物の凶暴化させておく。間違っても、宝石の場所を見つけられないようにな」 「はっ!」 「それと、マグリード様、七人目の転生者が入りました」 「最後の転生者か……。どのような力か楽しみだ」  マグリードは不敵に笑った。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加