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目が覚めると、あまりに白い光が強く、目が眩んだ。何だ、ここは。
「ほっほっほ。目が覚めたかの」
すると、目の前に白い髭を足で踏み、頭が綺麗に禿げあがった老人が純貴に向かって微笑んでいた。
「ご、ご老人。ここはどこです?」
「ご老人とは失礼じゃな。儂は神様じゃぞ、神様」
純貴は一呼吸置く。
「では神様、ここはどこです?」
「うむ。ここはお主たちの住んでいる世界と別の世界、そう、今流行りの異世界転生じゃー!」
場に沈黙が漂う。神様も首を傾げた。
「え? ここはもっとあるじゃろ。『うそー!』とか『アニメで見たやつやん!』とか」
「いや、すみません。アニメを見たことが無いもので。漫画なら一つだけあるのですが……」
神様は驚きの表情を純貴の目の前まで近づけた。
「な、なにぃ! お主のような高校生なんて大体アニメ大好きなオタクじゃろうが!」
凄い偏見だ、と純貴は頭をかいた。
「それと、異世界とは何です。俺は一刻も早く帰りたいのですが」
「無理じゃ。この世界とお主のいた世界はとても遠いい場所にある。距離じゃないぞ、種類の話じゃ。具体的にはアリジゴクとペッパー君くらいじゃ」
なるほど、とてつもなく遠い場所にある。神様は一つ咳き込む。
「まあ、この世界に転生したのはお主だけではない。お主を入れて七名おる。この世界の転生上限は七じゃからお主が最後となる」
「他にも、この世界に?」
「ああ。皆きっかけは違うがの。シャー芯を千回折って転生しに来た者もおれば、異世界に転生したいがために鉄橋から飛び降りた者もおる。最近の若者は死ねば転生出来ると思っておるのだから困るのぉ」
自分はトイレに流されてだ。
「神様、何故元の世界へ戻ることは無理なのですか」
「なぜじゃと思う」
純貴は少し考えて首を振った。
「帰りたいと思う者がいないからじゃ」
神様はおもむろに背中から杖を取り出すと、透明な床にカン、と立てた。
「大体異世界に来る者など非リア充がほとんどじゃ。社畜だったり、オタクでニートだったり……。そんな者らがこのような異世界に来て、最強の能力を与えられるのじゃ。厳しい現実世界へなんて帰りたくなくなるわい」
確かに、そうかもしれない。もし自分がひ弱で無力で絶望の中にいたのなら、帰りたいとは思わないだろう。しかし――
「俺は祖父を一人置いてきてしまったのです。何としても帰らなければならない。たった一人の肉親を、手放すわけにはいかないのです」
大きな体を起こし、純貴は神様を真っ直ぐ見つめた。神様は俯いた。
「すまんな。儂の力を持ってしても、お主を元の世界へ戻すことは難しい」
純貴は唇を噛んだ。もう、祖父とは会えないのか……。
「しかし、全くもって方法がこれっぽっちもない訳では無い」
純貴は顔を勢いよく上げた。
「ど、どうすれば」
「この世界に存在するか定かではないが、ホーリーラジェントという宝石が十ある。それを全て集め、ここへ戻って来い。そうすれば、出来るかもしれん」
「ホーリーラジェント?」
「そうじゃ。ホーリーラジェントはこの世界において最高にして最大のレアアイテムであり、その宝石一つで国を一つ吹き飛ばす事が出来ると言われるほど、強大な力があるのじゃ。これを十集めると……先輩から聞いた話しか出来ぬが、あらゆる願いを叶えさせてくれる、ミリオネアラジェントに変化するという」
純貴は唾をゴクリと飲んだ。神様って先輩いるんだ、とツッコむことさえできなかった。
「……わかりました。では、そのホーリーラジェントとやら、集めてきましょう」
そうか、と神様は頷くと、肩に手を置いた。
「ではお主に基礎能力とスキルを与える。最近、神様教会から転生者を強くしすぎだと怒られておってな……。平等を期すためくじで決めさせてもらう。さあ、引くといい」
神様は懐から、屋台のくじが入っていそうな箱を取り出すと、純貴の前に差し出した。
神様も緊張の面持ちだ。なるべく強い能力を手に入れれば、ホーリーラジェントを入手する近道になるはず――
心臓が耳の奥で鼓動している。大丈夫だ、俺は引く。じいちゃんに、あの世界に、帰るんだ!
「うおおおおお!!」
純貴は箱に手を突っ込むと、勢いよく三角形に折り畳まれたくじを取り出した。
「見せよ!」
「はい!」
純貴は神様にくじを渡し、神様も勢いよくくじを開いた。すると、神様の目がカッと見開く。
「お主の能力は……攻撃力無限大! その代わりHP1、物理および魔法防御力は0じゃあ!」
な、何だそれ……!
純貴もつられて目を見開いた。
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