Episode1 泣きっ面に蜂

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「それは、どういう事ですか」  恐る恐る純貴は神様に尋ねた。 「うむ。完全に遊びおったな神様協会長め」 「遊んだ?」 「なんじゃ、お主まさかRPGもしたことないのか」  純貴は勢いよく頷く。 「まず、攻撃力無限大。これはよくあるチートじゃ」  チート……? 酒のつまみか何かだろうか。 「しかし、このHP1と防御力0は中々厳しいのぉ。どんな敵の一撃でもやられてしまうぞい」  なっ……。 「諸刃の剣じゃな。逆に割り切れるといえば割り切れるが……」  神様は難しい顔をしている。しかし、純貴はそうでもなかった。 「いえ、大丈夫です。俺はこの能力で、ホーリーラジェントを集めてみせます」  神様は微笑むと、 「そうか……無事を祈っておるよ」  そう言って指を鳴らした。次の瞬間から、純貴は草原のど真ん中に、裸一貫で横たわっていた。  始まったのか、異世界とやらの生活が。  純貴はフゥーと息を吐くと、一歩を踏み出した。  しばらく歩いていると、小さな集落が見える。すると、男性が一人こちらを見て、手を振っていた。 「おーい、そこの人、服はどうした」  どうしたもこうしたも転生されてすぐなのだ。しかし、それにしても神様は服くらい渡してくれても良いだろう。 「諸事情あってないのです!」 「じゃあ、このボロボロな布切れがあるから腰にでも巻いておきな」  男は黄身がかった、まあ綺麗とは言えない布を渡してくれた。贅沢は言えないし、何より裸はまずい。純貴は有難く受け取った。 「お兄さんどこから来たの」  誤魔化せば良いものの、純貴は嘘がつけない男である。 「異世界からです」  一拍の沈黙の後、 「……頭を強く打ったようだな。まあこんなボロ屋だが、ゆっくりしていくといい」  まともに相手にされない。男たちの集落はどんなお世辞を言っても綺麗とは言えず、貧しそうなところだった。 「いえ、そんな。もう十分お世話になってしまいました」 「いいの。いいの。その代わりと言っちゃなんだけど、子どもたちと遊んでくれないかね」 「それで恩返しが出来るのならおやすい御用です」  子供は好きだ。一時期小学校の教師になりたいとも思っていたのだ。それにしても――  純貴は集落を見渡した。どことなく空気が重い。まるで何かに怯えているような……。  しばらく子供と遊んだ時だった。奥から醜く、肌が緑色の恰幅の良い生物が十体ほど現れたのだ。 「またかよ……今日はなんだ」  辺りに不穏な空気が満ちる。あの化け物は何だ? 「おい人間共、死にたくなけりゃ食料か金目のもん出しな」  聞いていて不快になるような声だ。 「なあ、頼むよ。こんなに貧しい集落なのに、お前たちのせいで生活が出来なくなってきたんだ。もう、終わりにしてくれないか」  一人の男がそう懇願している。 「はぁ? 何寝ぼけたこと言ってんだ。お前らは永遠に俺様たちに貢がなきゃならねえんだよ。わかるか? この近くにあるヘンドリア王国ができてからもいうもの、剣士やら銃士やら魔導師やらで、ここら辺の魔物はみんな狩られちまった。だからなぁ、お前らが俺たちに食いもんや金を貢ぐ責任ってのがあるんだよ」  純貴はそれを全て聞くと、あの化け物の前に出た。 「何だお前」 「だったらあの国にそう言えばいいだろう。こんな貧しい集落にたかるなんて、弱いものいじめにしか見えないぞ!」  彼は正義感の塊である。曲がっているものは嫌いだ。弱いものいじめは、もっと嫌いだ。 「おい……」 「なんだとこの野郎。どうやら、この集落を潰して欲しいみてえだな!」  化け物……今思い出した。これはオークというやつだ。 「そんなことは俺が許さない」 「ほう。やっちまえ!」  十体ほどのオークが、棍棒を振り上げ純貴に迫る。  純貴は集中した。
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