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攻撃力無限大、HP1、防御力0。恐らくガードをしてもダメージが入り、死ぬだろう。攻撃は避けるしかない。純貴は持ち前の身体能力を生かし、オークの棍棒での攻撃をひらりひらりと避ける。
「くそ、このガキ!」
走ってきたオークの動きを読む。
肩が上がった。棍棒で殴るつもりだ。
純貴は迫る棍棒を横にかわすと、カウンターパンチを顔に食らわせた。
その時だった。辺りに衝撃波が飛び、地面は割れ、地が揺れた。
「な、なんだぁ!?」
そして放たれた衝撃波が一気に純貴の拳に集結し――拳を振り抜いた瞬間大爆発を起こしたのだ!
「ぐわあああ!!」
オークたちはその衝撃波に吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。殴った純貴は、自らの腕を見つめて困惑した。
(な、なんだこれは!?)
当然だ。普通殴っても衝撃波は起きないし、爆発もしない。しかし、純貴の『純』は純粋の純である。
(まさか、俺のように鍛えると、爆発が起きるのか――)
彼は人を殴ったことがない。殴る場面は何度も見て、それを助けてきた男だった。つまるところ、彼は自分が鍛えすぎてパンチをすると爆発するようになったと勘違いしているのだ。
純貴は拳を上げると、ガッツポーズをした。
「あと俺に殴られたいやつは誰だ」
オークらは恐怖のあまり緑の顔をさらに青くさせて首を振った。
「なら出ていけ。二度と悪さをするなよ。それと取り上げたもの全て返せ」
「は、はいぃぃ」
オークらは腰を抜かしたまま、自分たちの縄張りへ走っていった。集落にいた者たちは顔を合わせると、歓喜の声を上げた。
「ありがとう君! 奴らには困らされてばかりでね……本当に助かった。君は我々の勇者だ!」
照れつつ集落の皆と握手を交した。皆には笑顔が溢れ、集落の重い空気はなくなっていた。
オークらが奪ったものを全て持ってきて、よくよく奪うことの愚かさを教え、帰らせた。
「なんなりと礼をさせてくれ。君には助かった」
純貴は苦笑した。
「いえ。俺はもう行きます。やらなきゃならない事があるものですから」
必死に止められたが、純貴は旅立つ決意をしていた。皆は諦めたのか、せめて感謝の気持ちを、と青い宝石のついたペンダントをくれた。この集落の宝だという。
「この先を真っ直ぐ行けば、ヘンドリア王国があります。そこでこのペンダントを売れば、服くらいは揃えられましょう」
「そんな。売れないですよ。こんな大切なもの」
純貴は笑って返すと、旅立ちの時を迎えた。
「では、世話になった。ありがとう!」
純貴が背中を向き、去っていく。
「そう言えば、名前を聞いていなかった!」
後ろから、あの最初に会った男の声がした。
「純貴だ! 皆さんお元気で!」
純貴は手を振った。
「ジュンキ様か……。俺らの心に、永遠にいてください」
集落の皆は、純貴の姿が見えなくなるまで手を振った。
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