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その一連の様子を、物影からじっと見ていた少年がいた。再び歩きだしたリーヌスの背に向かって憎々しげに舌打ちし、それからそっと己の羽に目を遣った。
ほんの微かに輝きを帯びてはいるが、黄金色とはかけ離れた、地味な、緑色の羽である。
魔法使いは皆、羽を持つ。人々を魔法の力で手助けすると、人々から「星」が生まれ、その「星」を食べることで、羽は輝きを増していく。
つまり羽の輝きは、人々に灯った希望の光でもある。リーヌスの黄金の羽は、これまでに多くの人々を救い、感謝されてきたことの集大成だ。
少年アレクは、激しく嫉妬していた。リーヌスとはそれほど年齢も違わず、魔法使いとしてこの世に降りてきた時期も同じだった。にもかかわらず、あっちは既に最高位の魔法使い。片や自分は──。
気力、体力をすり減らして魔法を使い、人々の希望に応えるのだが、少しでも希望に沿っていなければ、口では「ありがとう」と言われても、星は生まれない。
───めんどくせえ。
羽が輝くほどに、魔法使いとして有名になり、信頼度も増し、人々からの依頼も多くなる。まったくムカつく仕組みだ。本当に星が必要なのは、俺たち底辺の魔法使いじゃないか。黄金色の羽をこれ見よがしに見せつけて自分は最高位の魔法使いだって威張ってるヤツなんか、もうとっとと天界に帰ればいいんだ。
腹いせに、路地の奥へ向かって思いきり小石を蹴飛ばした。
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