輝きの魔法使い

3/6
前へ
/6ページ
次へ
 ころころと転がる石が、汚れた靴に当たって止まった。  誰か、そこにいたのだ。アレクはゆっくりと視線を上げた。  背の低い、ずんぐりとした男がにやにやしながらアレクを見ていた。その薄汚い格好にアレクは顔を顰め、(きびす)を返そうとした。 「待ちなよ、魔法使いの兄ちゃん」  ひどくしゃがれた声がアレクを立ち止まらせた。更に眉を寄せるアレクに、だがまったく気にする様子もなく、男が近付いてくる。 「星。必要なんじゃないかい?」  意外な言葉に、アレクはつい目を見張った。  星が、必要……?  ああ、もちろんだとも! 「俺は見てのとおり貧乏でね。魔法でカネを出してくれよ。そしたら星が生まれるからさ」 「あ……でも……」  言い淀み、俯く。 「お金は魔法では出せないんだよ」 「じゃあ、カネになるものだったらなんだっていい。銀の食器、絹のドレス……」  それらをカネに替えるつもりか。  これは、正当な取引とは言えない。魔法は、人々の心を豊かにすることが本来の目的なのだ。  ちらりとアレクの脳裏をリーヌスの姿がよぎった。  リーヌスのように黄金の羽を持ってさえいれば。最高位の魔法使いだと評判になり、次々に依頼が入る。リーヌスだってあっという間に黄金の羽を手に入れたのだ、何か狡い事をしたに違いない。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加