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男の望むとおり、アレクは次々と高価なものを造り出した。面白いように現れる品々に男の目はぎらぎらと輝き、そのたびに星が生まれた。
星をひとつ食べると、緑色の羽が黄緑色になった。もうひとつ食べると、黄色に輝いた。更に食べると、光を放った。
「すごい! これで俺も最高位の魔法使いだ!」
アレクは上体を捻りながらくるくる回って、輝く羽を嬉しそうに見つめた。
胸を張って通りを歩くアレクに、人々の羨望の眼差しが降り注ぐ。そう、俺は最高位の魔法使い。この黄金色の羽を見よ!
「魔法使い様!」
さっそく声がかかった。やはり羽の色の威力というものは相当なんだ。
にっこり笑って振り返ると、髪を振り乱し、だが魔法使いを見つけたことでほっとしたような、切羽詰まった表情の女性が息を切らしていた。
「お願いです、息子を、私の赤ちゃんを、助けてください!」
女性の胸には、ぼろぼろの布にくるまれた小さな赤ん坊が抱かれ、ぐったりと目を閉じていた。
赤ん坊の命を、助ける……。
そんな魔法は使ったことがない。が、この黄金色の羽に懸けて「出来ない」とは言えない。周囲には人だかりもできている。
嫌な汗が伝うのを感じながら、アレクは差し出された赤ん坊に手を翳し、ごにょごにょと呪文を唱えた。人々の、好奇と期待に満ちた視線が集まる。
ごにょごにょ、もにょもにょと、知る限りの呪文を唱えたが、いつまでたっても赤ん坊の様子に変化は訪れなかった。
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