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輝きの魔法使い
「ああ、ほら見て。リーヌス様よ。なんて神々しい羽でしょう!」
石造りの家が建ち並ぶ王都のメインストリートをゆったりと歩きながら、リーヌスは声のしたほうへ僅かに顔を向けると、小さく微笑んでみせた。途端に黄色い声が上がる。
銀色の長い髪とまるで対でもあるかのように、黄金色に輝く背中の羽は、リーヌスが最高位の魔法使いである事を示していた。のみならず、彼の凛と美しい容姿は、ほとんどの者を虜にした。
「リーヌス様!」
ふと、思い詰めた表情の女性がリーヌスの前に飛び出し、リーヌスは驚いて足を止めた。
「ど、どうかこれを……」
おずおずと差し出した袋の口を、女性自らが震える手でぎこちなく開けると、眩い光が迸った。
「これは、先の感謝祭で、私の娘が産み出した星です。どうかこれをお納めくださいませ」
まぶしさに目を細めていたリーヌスは、だがそっと、優美な手で袋の口を塞いだ。
「私はあなたに何も与えておりません。なのに星を貰うなど、出来よう筈がありませんよ」
茫然とする女性に、そっと袋を押しやる。
「それにその星は、娘さんの、あなたへの感謝の証。娘さんの気持ちを踏みにじってはなりませんよ」
優しい声音で諭され、女性は顔を真っ赤に染め上げて俯いてしまった。
「あなたのご厚意には心から感謝いたします」
膝を折り、恭しく頭を下げるリーヌスに、女性は逃げるようにその場から走り去っていった。
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