誰かの傷跡 4

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誰かの傷跡 4

桂奈が会計を済ませると、そのまま四人は病院を出て、駐車場に向かった。 夜が深くなった駐車場には、大輔たちが乗ってきた二台の車だけしかいない。少し離れて停まった車にそれぞれ乗り込み、桂奈と合田が乗った車はすぐに発進していなくなった。 明かりの少ない、暗くて広い駐車場には、大輔と晃司が乗る車の一台だけになった。 二人が乗る車は晃司が運転してきた車だったからか、今日は晃司が運転すると言い出した。晃司と二人なら後輩の大輔が運転することが多いが、特に断る理由もないので彼に従って助手席に乗り込む。しかしなぜか、晃司が中々エンジンをかけない。 「晃司さん? 俺たちも早く戻らないと」 「お前……ほっんとにひどい男だな」 「え?」 「他の男のことで泣くどころか……他の女にプロポーズしやがって」 晃司がニヤリと大輔を見る。大輔は焦った。桂奈との会話を最初から聞かれていたらしい。 「あの時近くにいたんですか?! あれはその……浮気とかじゃないですからね! 桂奈さんの怪我が……しかも顔に大きな傷を負わせちゃって俺、ショックで……」 人から指摘されると、自分がとんでもない爆弾発言をしたのだと思い知らされた。先輩の女性警官に、結婚してください、はかなりスキャンダルだ。 慌てる大輔を、晃司が声を立てて笑う。 「プロポーズはやりすぎだけど、大輔が動揺するのもわかるよ。俺だって……俺が惚れてるのは大輔だけど、目の前で殴られてキツいのは、桂奈の方だと思う。これ、なんなんだろうな? こういう感情も古臭い、性差別の名残なのかもしれないが……やっぱ、女が傷つくのを見るのは辛いよ。桂奈は俺らに守ってもらいたいなんて思っちゃいないだろうが、俺も、あいつの顔の傷を見ると苦しい」 男性が女性を守るべき、というのは古い考えなのかもしれない。そんなことを望まない女性だって増えているだろう。けれど晃司の言う通り、大輔もきっと、目の前で晃司と桂奈が暴力を振るわれたら、桂奈を真っ先に助けるだろう。 それでも、プロポーズはやり過ぎだった。晃司という大切な人がいるのに。 「晃司さん、色々……ごめんなさい。桂奈さんにもすぐに訂正してきます。結婚は……できないって」 大輔が素直に謝ると、晃司はさらに大きく笑った。 「バーカ。あんなの桂奈が本気にしてるわけないだろ。わざわざ訂正されたら恥かかされた気分になるわ」 「そ、そうですよね……ダメだな、俺。なんか色々……テンパっちゃって……」 桂奈の怪我で、晃司が撃たれた時を思い出した。色んな思いがグルグル駆け巡って、大輔の頭と心は混乱している。 心が落ち着かず、頭が働かないので思わずうつむくと、おい、と晃司に優しく呼びかけられた。 「俺、お前のこと……頼りないなんて思ってないからな」 「……え? あ……」 晃司に全て聞かれていたのだ、桂奈との会話を。 「あの時のことをお前と話さないのは……お前を思い遣ってじゃない。むしろ……逆だ。お前に遠慮してないから……お前なら、いいかなって」 晃司の言いたいことが理解できず、大輔は首を傾げた。少し、晃司らしくなかった。いつも大輔より大人で思慮深い晃司が、言葉に迷っている。 晃司はハンドルに両手を置き、フロントガラスの外を見ながら、ゆっくり話を続けた。 「あの時……撃たれた時……一瞬だけ思った。あ、俺死ぬかもって」 心臓がヒヤリとする。大輔も感じた。流れ出る大量の血を見ながら、晃司が死んでしまう、と。 あれが思い過ごしでなかったことが――ショックだった。 「気を失う直前、尋常じゃない血が流れてるのがわかったし、急激に体が冷えてくのもわかった。あ……これはヤバい、て思ったんだ。まぁ実際は大したことなくて、今じゃピンピンしてるわけだけど」 晃司が大輔を振り返る。大輔を安心させようと、ふざけた調子で笑って。――大輔の胸がギュッと痛む。 「あの時の、たった一瞬の、死ぬかも……て感覚が今でも忘れられないのかもな。あの……恐怖感が。だから、こんなに元気になった今でも、あの時のことはあんま……話したくないんだ。だけど、それを周りの奴らに悟られて、気遣われるのもイヤだし、悪いし……冗談っぽく話したりする時はある」 晃司らしい、と大輔は感じた。晃司は自分の感情より他人の気持ちを大切にする、優しい人だ。 だけどな、と晃司が大輔を見る。その目がいつになく弱々しくて、大輔はドキリとした。 「大輔には……大輔の前では、いいかなって。……頑張んなくても」 晃司が儚げに微笑む。彼らしくない表情に不安になるが、続く言葉に喜びを与えられる。 「大輔といる時は……無理して平気なフリしなくてもいいかって。大輔の前では、辛いことを辛くないフリする気が起きなかったんだ。だから……お前の前ではあの時のことを話さなかった。俺もそう意識してたわけじゃないけど、そういうことだと思う。……大輔は俺に、なんも考えないでいい、くつろげる時間をくれるんだ。……でも、俺がなにも言わないせいでお前を苦しめてたなら、悪かった」 大輔は、泣きそうになった。晃司が、自分といると辛いことを考えないでいられる、と教えてくれて。 晃司の役に立っていることが嬉しい。自分はいつも晃司から与えられるばかりだったから、自分も晃司になにか与えられていると知って、嬉しくてたまらなくなり――誇らしくさえ感じた。 「……いいんです。晃司さんがそんな風に思ってくれてたなんて……すっごく嬉しいです。俺、晃司さんに甘えてばっかりだと思ってたから」 「そんなことねぇよ。大体俺だって、お前に甘えてばっかりだろ? 俺はお前より大分年上なのに」 「晃司さんが……俺に甘えてる?」 「……本当は、お前の気持ちなんてわかってるのに、穂積のことで……お前にみっともなく怒っただろ?」 晃司は気まずくなったのか、わずかに大輔から視線をずらした。 「わかってるんだよ、大輔の気持ちは。疑ってなんかない、お前が俺に惚れてること。だけどさ、なんか……俺ばっか、て焦る時があるんだよ。俺ばっか、お前のこと……」 好きな気がして――そう吐き捨てるように言った晃司は、珍しく赤くなっている気がした。暗い車内では確信できないけれど――。 「あーあ! 口に出すとサイコーにダセェな」 「そんなことないです! 晃司さんは俺にとって、とゆうより他の人から見てもすっごく格好いいし、実際晃司さん、男女問わずモテるし……ダサくなんかないです! 晃司さんはずっと俺の……憧れの人ですよ」 心を込めてそう伝えると、晃司はまた珍しく、照れたようにはにかんだ。 「そんな可愛いこと言って……穂積に会ったら目がハートになるくせに」 ドキッとした。オタク心理を言い当てられたのと――穂積、と晃司が拗ねたようにあの人の名を呼んだせいで。 やはり晃司は、穂積のことになるとムキになる。もし大輔の気になる相手が穂積でなかったら、これほど晃司が気にかけることもなかったのでは、と思う。 穂積だから、晃司は気になる。それはつまり――。 先ほどの話が蘇る。恋人は大輔だが、目の前で殴られて辛いのは桂奈の方だという晃司の話が。 もし晃司の前で大輔と穂積が殴られたら、晃司は大輔を必死で守ろうとしてくれるだろう。そして穂積には、自分でなんとかしろ、と怒鳴る気がする。それは冷酷な態度に見えるが、穂積は自分で自分を守れる男だと信頼している証でもある。 晃司にとって大輔は守るべき相手だが、背中を預けて共に敵に立ち向かえる相手は――穂積かもしれない。 どちらがより、強い絆、といえるのだろうか――。 ずっと、胸に蓋をしてしまいこんでいる。晃司にとって穂積が――特別、であるという事実を。 そして今夜もまた、それだけは絶対に口にしたくなかった。口にしてしまったら、晃司が気づいてしまうかもしれないから。大輔が得られない、穂積との絆を――。 大輔は運転席側に身を乗り出し、駐車場に他に車がないことを確認しながら――晃司にキスをした。 短いキスだけして離れると、晃司が目を瞬かせる。 「どうした? 外で大胆だな、お前にしちゃ」 「お詫び、です。その……諸々の」 他の誰かのことを考えてほしくない。とは言いたくなくて、小さな嘘を吐く。 「お詫び、ねぇ……。そういえば、俺、お前に口説かれてる最中だったよな」 「え? それ、まだ続けます?」 真剣に謝っているつもりだった大輔は驚き、呆れたが、晃司は楽しそうにニヤニヤしていた。 「いいだろ、たまには俺をイイ気分にさせろよ。イケメン刑事に口説かれたいなぁ」 そう言った晃司の笑顔があんまり甘美で――色っぽくて、どちらが口説かれているのかわからなくなる。やはり晃司は大輔にとって――憧れの男だ。 思いは自然と溢れた。 「……晃司さんに、触りたいです」 口説き文句とは程遠い、幼稚な誘い文句を呟く。言葉は幼いけれど、その目は濡れ、恋人を情熱的に誘っていた。触れたい思いは本物で、大輔自身を焦がすほど切実だったから――。 「晃司さんにもっと、キスしたいで……んっ」 言い終わらぬうちに、晃司が助手席側に乗り出してきて、大輔の唇を奪った。 「……俺も随分、簡単な男になっちまったな」 晃司が意地悪な、けれど蕩けそうな笑みを浮かべる。大輔など、百年経ってもこんなイイ男は口説き落とせなそうなのに、彼は自分を選んでくれた。 「……もっと、です。もっと欲しいです」 晃司が自分を選んでくれたことが自信となって、大胆に誘うことができた。再び晃司のキスが降ってくる。 晃司の唇は、今夜は少し乾いて熱っぽかった。その隙間から、濡れた舌が差し入れられる。人気がないとはいえ外なのに、晃司のキスは大輔のよりずっと大胆だ。 小心者の大輔は、外の様子が気になる。もし誰かに見られたら――そう思うと不安になって鼓動が早くなるが、それは胸の高まりに似てもいた。 しかもこの車は署の車で、いつも同僚が仕事のために使っている。大輔だって仕事で何度も乗った。そんな車の中で、晃司と激しいキスをしている。 外に停めた、署の車の中で晃司と抱き合っている――イケないことをしていると思えば思うほど、大輔の心と体は熱くなって、晃司の唇を乱暴に貪った。 キスの水音が狭い車内に響き、衣擦れの音も大きくなる。キスだけじゃ足りなくなった二人は、互いの体をスーツの上から弄り合った。 大輔は晃司の広い背中に手を回して強く抱き、晃司は大輔のジャケットのボタンを外しはじめた。シートに押しつけられ、ジャケットの中に忍び込んできた熱い手に、ワイシャツの上からあちこち撫で回されると、大輔の体が誘うように揺れた。 下唇を甘噛みされながら、ワイシャツ越しに胸を撫でられた。優しく揉まれ、ふと我に返る。そういえば、晃司はこの貧相な胸をどう思っているのだろう。大輔の胸筋は、いたって普通。当然結花のように丸く膨らんでもなければ、合田のように盛り上がって主張してもいない。 大輔は、弱々しく晃司を押し止めた。晃司が不満そうに顔をしかめる。 「あの……俺、もっと筋トレした方がいいですよね? 晃司さん、大きい方が好きだから」 大輔が真面目に訊ねると、晃司は小さく噴き出した。 「なんだそれ。大きいのは好きだけど、女の場合だぞ。男だったらこれぐらいが……お前のが最高だよ」 晃司は柔らかく微笑んで、手早く大輔のワイシャツをくつろげた。下着のTシャツをまくり上げ、ネクタイは緩めて肩のあたりに引っかけられた。 そうして薄暗い車内で裸の胸を露出させられる。直に胸を揉まれ、大輔は甘い吐息を零した。 「細マッチョ具合がちょうどいいし……乳輪の大きさと乳首の色もベストだよ」 「あっ、ん!」 チュッと音を立て、右の突起に口づけられた。それだけで大輔が甲高い声を上げると、晃司は嬉しそうにペロリと舐めた。左の方は指で摘ままれ、捏ねられ、そちらの快感を追っていると、右の突起を舌で転がされる。左右、絶え間なく違う快感を与えられ、大輔の全身は何度もビクビクと跳ねた。熱と血が、一気に下半身に集中していくのがわかる。 「やっ、そんなしたら……あっふ……んっんん」 「大輔……可愛いよ」 「やぁ……っ」 可愛い――あまり言い慣れない言葉は恥ずかしくて、下半身がムズムズした。 「ちょっと触っただけでこんなになって……最高に可愛い」 可愛いと囁かれ、濡れた突起に息がかかるたび、大輔の腰ははしたなく揺れ、だらしなく開いた唇からは嬌声が漏れた。 「このオッパイが一番好きだよ」 「も、もう……」 嬉しさより恥ずかしさが勝って、力の入らない手で晃司の肩を叩いた。ふと、自分がとんでもない格好になっていることに気づく。 署の車の中で、ジャケットもワイシャツも前を開かれ、ネクタイと下着のTシャツはまくり上げられて胸を露わにしている。晒された二つの突起は晃司の愛撫で硬くなって、片方が濡れていやらしく光っていた。 病院の駐車場、署の車の中でとんでもなく淫らな行為に及んでいる――。興奮は最高潮に達したが、わずかに残った理性でまくり上げられたTシャツを下ろそうとするも、その手は晃司に優しく掴まれ、阻まれた。 「なにしてんだ?」 「だってここ……外ですよ? それに早く署に戻んないと……」 「そう言ったって……こんなんで署に帰れないだろ」 ニヤつく晃司が大輔の下半身に目をやる。つられて見ると、そこはとっくに苦しいほど張りつめていた。 「で、でも……これ以上はこんなところじゃ……」 「俺が上手いことシてやるから、いい子にしてろよ」 「え? ……あ、あの……」 晃司の手が膨らんだ股間に伸びる。やんわり掴まれ、優しく扱かれると、大輔の全身が波打つように震えた。 こんなことをしている場合じゃない、という理性は、晃司の巧みな手淫でたやすく吹き飛ばされた。晃司が大輔の頬や首筋、それに胸にキスをしながら、片手で器用にベルト、ファスナーと開けていく。大輔はもう止める気もなくなり、卑猥な恰好に抵抗もなくなって、晃司の愛撫に溺れた。大輔の声も吐息もどんどん甘く、激しくなる。 「……大輔、ちょっと尻、上げろ」 耳元で囁かれた不埒な指示にも、体が素直に従ってしまう。大輔が腰をわずかに突き上げると、晃司はズボンとボクサーパンツを膝あたりまで下した。勢いよく飛び出した若い幹は、すでに先から露を零していた。 「脱がせとかないと、服や下着が汚れて大変だからな。……て、ちょっと遅かったか」 からかうように言いながら、晃司が体を屈める。大輔の蕩けた目がわずかに見開かれた。 「え?! そっち……?!」 晃司は大輔の下半身に顔を埋め、主張強めの大輔の分身を根元まで口に含んだ。 「うそっ……あっ、あぁあん!」 手でシてもらえるのだと思ったが、晃司はそれ以上の危険すぎる悦びを与えてきた。たっぷりの唾液を絡ませられて唇で扱かれると、眩暈のような快感に襲われた。 キスの時より激しく、淫猥な水音が車内に響く。強すぎる快感に攫われないよう、大輔はシートの端をギュッと握りしめた。 「……スゲェ、カチカチ。これじゃすぐ終わっちまうな」 首のつけ根の裏側を舌の先で舐めながら、晃司がやらしく呟く。 悔しくて晃司を睨んだが、その目は快感に溶けてなんの迫力もない。晃司は意地悪を言いながら、それとは裏腹な優しい手つきで硬くなった幹を扱き続けた。大輔が文句を言いたくても、口を開けば喘いでしまうだけだから、唇を噛んで堪えるしかない。 「なんだよ、すぐ終わった方がすぐ戻れんだろ? な、自分で胸、弄ってろよ。そしたらもっと早く、署に戻れんぞ」 晃司の意地悪がひどくなった。大輔が一生懸命睨むと、焦らすかのように、扱く手がゆっくりになる。舌で先端を舐め回されながら緩く扱かれると、気持ち良いけれどもどかしくて、腰の揺れが止まらなくなった。 「そんな……こと……できま、せん……」 絞り出した抗議の声は甘く、力がなかった。 「可愛いオッパイ自分で弄るとこ、見せてくれよ」 なぜだろう、晃司に可愛いと言われてしまうと、まったく抵抗できなくなってしまう。 大輔はオズオズと両手を上げ、自分で胸の突起に触れた。それだけでビクッと全身が跳ねる。突起も痛いほど硬くなって、指の腹で撫でるだけで痺れるほど感じた。 「ああ……エロ。ずっと見てられるけど……早く戻んないと、な」 グポッと音を立て、晃司が大輔にしゃぶりつく。舌を絡ませながら唇で扱かれると、大輔は声を上げて全身をくねらせた。 ジュプ、プチュ、という破廉恥な音の合間に、乳首弄るのやめるなよ、といやらしく囁かれた。言われるまでもなく、大輔の手も止まらなかった。 「あっ、あぁんん……これ……ヤバいぃ……」 晃司に口淫されながら、自分で胸を弄る。その状況だけで体が沸騰しそうになるし、晃司の攻めは今日も巧みで情熱的で、大輔はもうなにも考えられなくなって、与えられる快感を追い続けた。 硬く尖った、大小三つの先端に全神経が集中した。どこもジンジンと痺れ、そこから全身に広がった熱はあっという間に大輔を高みに昇りつめさせた。 「あっあっ……も、もう……出ちゃ……」 「いいよ、出しちまえ」 「やだっ、離し、てぇ……んんん、んっ!」 とどめを刺すように強く吸われ、閉じた瞼の中がチカチカ瞬き――大輔は達した。それなのに晃司は口を離さず、全てを晃司の口の中に吐き出させられた。 駐車場の車内、しかも署の車――それらが作用したのか、いつにも増して強烈な、アブない快感だった。 大輔は脱力してシートに沈み、肩で大きく息をした。少しすると晃司が体を起こし、濡れた口元を拭う。 「これで署の車を汚さずにすんだ」 晃司が二ッと笑う。ふざけていても匂い立つ雄らしさ、いやらしさに、達したはずの大輔の下半身が疼く。気づかぬうちに、また胸を弄っていた。 「……俺も、シます……」 晃司の下半身も張りつめている。あの熱さを知っているから、触れたくてたまらなかった。 しかし晃司は嬉しそうな、困ったような顔で笑った。 「俺もお前にシてほしいけど……大輔、俺にシてるうちに、また欲しくなるだろ? そしたら俺もまたお前にシたくなって……無限ループだ。だから、今はここまでな」 残念ながら、晃司の指摘は当たっていた。このまま続けたら、二人とも最後までイかないと終わらないだろう。そうなったら車は汚れるだし、署にも戻れない。 大輔は渋々頷いた。欲望が収まらずムくれて唇を尖らすと、その唇にチュッとキスされた。 「つうことで、そのエロい恰好早く直してくれるか? 目の毒だ」 ニヤニヤと笑われ、大輔は急に羞恥を思い出した。 「半分は晃司さんがしたんじゃないですか!」 怒りながら乱れた服を整える。その様子も、晃司はニヤけ顔で眺めていた。 「な、今度、車でスるか。狭い車内とか、外とか……ちょっとハマったかも」 大輔は拗ねて、ウンとは言わなかった。けれど、イヤです、と拒否もできなかった。 大輔も少し、癖になりかけていたので――。 精一杯つっけんどんな態度で、ワイシャツをズボンにしまい直した。
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