隣の席のチハル

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肉じゃが、煮豆、白和え、茶碗蒸し。それにサツマイモの炊き込みご飯。 「なんか、料亭みたいだな」 行ったことないけど、と付け加える俺に、チハルは吹き出した。 「じゃあ、俺帰るわ」 「え? 一緒に食っていかないの」 そのつもりで皿につぎ分けていたのに。「うちの家族五人なんだけど」と言いながら6枚目の皿に盛った煮豆を見せた。 「ああ、俺の分、作ってあるだろうから」 チハルは少し申し訳なさそうだったが、これ以上勧められないように見えない壁を作っていた。 椅子の背にかけていた上着を羽織って逃げるようにそそくさと鞄を背負うチハル。入れ違いに父さんが帰ってきた。 「あっ、こんばんは!」 人見知りなのか、もの凄く緊張した声で挨拶すると、慌てて出ていった。 「……?」 玄関のドアが閉まったところで、妹が雷のように騒々しく二階から降りてきた。 上下がちぐはぐで、髪もボサボサ。イヤリングも片耳ずつ違っていた。変な化粧、マニキュア。 「帰っちゃったの!?」 泣きそうな顔で俺に詰め寄ってくる。俺と父さんは呆然と妹を見ていた。 チハルが帰ってて良かった。
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