隣の席のチハル

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隣の席のチハル

ーー今日、お母さん地域の用事で夜出掛けるから、ご飯作っといて。 母親からメールが来るときは大体それだ。(ねえ)ちゃんと妹はいるけど、上は帰るのが遅い大学生のサークル狂だし、下は高校一年生だけど料理の「り」の字もできない。但し食べるのは好き。特にジャンクフード。 「あー、メシ、何作るかな」 ふと視線を感じて隣を見ると、千賀野チハルと目が合った。思ったことがつい口からこぼれていた。それを聞かれたんだろう。コイツは面倒見がいいから、『助けてやりたいセンサー』が反応したに違いない。 「平原がメシ作るのか?」 「時々な」 「へぇ」 ちょっと冷やかすような、それでいて好奇心を含んだような相槌。 「チハルの好きな食べ物って、何?」 夕飯の参考にしようと思って尋ねると、チハルは「あ?」と聞き返してくる。 「お前の家族の好きなもの作ればいいんじゃねぇの」 ニヤリと笑うチハルは、俺の考えを見透かしていた。 「バラバラなんだよな。姉貴は鶏肉、妹は太ってるからカロリー高いの気にしてるし、親父は酒の肴あれば何でもいい人だけど」 「じゃあお前んとこの母さんは?」 そう聞かれて、ふと考える。 何だろな。 あんまり母親の好みとか聞いたことない。 「今日は母親喜ばせてみれば?」 チハルがわざとニッコリ笑った。
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