痛グラフィーの真意

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痛グラフィーの真意

私はスマホを見返して乾いた笑いを漏らす。もしまた夫が璃子さんと怪しげな行動を見せたら、この痛い夫グラフィーと嫁グラフィーをスタンプやモザイクなしでネットにアップしようかな。 社会的に死ぬって? いいじゃない? ただ、水を飲もうとしてる妻 ただ、薔薇の隣に立った夫 何もやましいことはない 少し演出された日常 肖像権や著作権侵害で 夫が私を訴えたいなら 訴えればいい 欲しいなら金などくれてやる 籍を抜きたいなら抜いてやる でも私は絶対に自殺などしない 社会的に死ぬ覚悟は出来ている 職場にいられなくなっても構わない 私は嘲笑われても絶対に死なない 文無しになろうが 独り身になろうが ネットで笑われようが 夫と裁判で著作権や肖像権で泥試合しようが 誰になんと言われようと 最高の夫グラフィーと嫁グラフィー 二人だけのアルバムで満足して SNSに配信しないのは 今が幸せだから もし、その幸せがいつか壊されたとしたら 私のタガは外れる その幸せがもう帰って来ないと分かったら 懐かしい日を惜しむように 薔薇より美しい夫を 水を手に微笑む自分を もう戻れない愛しい過去として ネットの海に垂れ流すだろう そして性懲りもなく、ネットに写真を晒した浅はかな自分をネタに下手くそな小説を書き続けるのだろう。 夫の名前がずっと出てこないのは、いつか幸せが壊れて痛グラフィーをアップするときまで秘密にしておきたいから。壊れそうという予想が当たって欲しくないけれど。 人生の全てを下手くそな小説のネタにしてやる。どんなに辛いことでもネタに変えて書いて生きていく。出来るなら壊れないギリギリのラインで夫のお気に入りの璃子さんにはネタを提供し続けて欲しい。 「璃子さん、貴女はネタの宝石箱」 璃子さんをネタにしてスマホで小説を書く。私のこの意地悪な顔を誰か写真に撮ってくれないだろうか?
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