1999年7月31日

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1999年に入ると、待ってましたとばかりにテレビラジオ雑誌新聞のカルテットが騒ぐ騒ぐ。 ところが肝心の夏になる頃には、こいつら一切ノストラダムスに触れなくなりやがった。 あんなに毎日、ハレー彗星がぶつかるだの別の小惑星がどうのと言ってたくせにだよ。 まあこんなのは後で思い出した事。 全く興味が無かった俺はその年の7月31日も普通に家にいた。 夏休みだからノストラダムスなんて話すクラスメートもいなかったし、成績がいいのだけが取り柄だったからコツコツ勉強してたよ。偉いだろ?一応、将来の夢もあったからな。 両親は仕事。疲れたからちょっと横になろうかなと思った時だ。玄関のチャイムが鳴った。 来客の予定なんてなかったけど、平和な時代だから。怖いおじさんに受信料を払えとか脅される事もない。 『はーい?』 玄関を開けると、偉そうな外人のおじさんが立っていた。 きちんとした身なりだが、どこか古臭い。 いや、どこかどころか全てが古臭い。 凄い目力だが悪意は感じない。頭の良い人独特のオーラが漂っていた。 面長で、ハイジのおじいさんみたいな立派なあご髭と鼻髭ともみあげが繫がっている。 ……どっかで見た様な……? すると外人さんは今で言うスマホみたいな物を取り出し、それに口を付けて話し始めた。 なにやら鬼気迫る表情だった。 『あなたを探していました。 おお神よ、やっと会えました!』 『えっ!?』 『少年よ、頼みがあるのです。 どうか……いや、是が非でも聞いていただきたい。怪しい者ではありません。 私はノストラダムスと呼ばれている者です。 』
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