1999年7月31日

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外人さんは熱弁をふるいながら、いつからか漫画の様な大粒の涙を流していた。 ぽたり、ぽたりとそれが落ちて玄関を濡らす。 『いえ、それで良いのです。 私の予言も私の事も全く信じない。その強い心が必要なのです』 いやいや。俺じゃなくても信じられないだろう?こんなの。 机の引き出しがタイムマシンになってる世界のお話じゃないか。 過去からやって来たノストラダムスが? 時間警察に要請されて? 自動翻訳機とかセンサーとか未来の道具を使って? 人類滅亡の危機を救うために俺に会いに来た? 信じられるのは、世界中で一番予言を信じていないのが俺だって事くらいだ。 でも。 『それで、どうしたらいいんですか?』 目の前の外人さんが真剣な事だけは分かった。間違いなく必死だった。 話は全く信じられないけど、嘘は言っていないと感じられた。 もちろん予言なんて忘れてたくらいで、今言われた通りかけらも信じていないけど、この人そのものは信じてあげる気持ちになった。 だって俺みたいなガキの前で立派な大人がこんなに泣いてるんだぜ…… 俺だって鬼じゃない。 『協力していただけますか!?』 『ええ、まあ……』 俺は外人さんを部屋に上げた。 いや、平和な時代だったんだよ。
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