1999年7月31日

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『では少年よ、これをかぶっていただきたい』 外人さんはごちゃごちゃとケーブルが繫がったゴーグル付きのヘルメットみたいな物を渡した。今思えば3D映像が観れるアレみたいな奴だ。 『そして目を閉じるのです。 ……どうです?何かが頭に浮かぶでしょう?』 『……あー、はい』 不思議な感覚だった。 目を閉じているのに、広大な宇宙が見えた。 果てしなく、果てしなく広い。そして静かだ。 あれは……地球か? あれは太陽で……水星と……あれは金星かも? 『どうです少年よ、何が見えますか?』 『宇宙……ですね。地球が綺麗です。 そして広くて広くて。とても静かです』 そう応えた途端、ヘルメットに繫がった機械からピーッ!と電子音が響いた。 『おお……!少年よ感謝します! あなたのおかげで地球は救われました! 世界中の人々の「信じている心」のベクトルが、あなたの「信じない心」のベクトルと打ち消し合い、ゼロになったのです。 宇宙はあなたが見た通り、限りない静寂と平和を取り戻しました!』 外人さんはまた大粒の涙を流しながら、俺の手を取り何度も何度も感謝の言葉を翻訳機越しに叫んでいた。 『ありがとう、信じずにいてくれて! もしあなたが信じていたら、逆に世界中が信じていなくても滅亡は免れなかっただろう。 それ程あなたの頑固さは素晴らしい!』 これって褒められてんの?
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