黒ヤギさんからお手紙着いた

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 一瞬、本物かと思って恐怖を感じたものの、よくよく考えれば、このSNSは〝ともだち承認〟しないとメッセージを送ることができないはずだ。  ということは、わたしが承認している人間――つまりは家族か友人、その他知り合い以外に送り主はいないことになる。  普通は変えることのできないIDをどうやって変更したのかはしらないが、おそらくは知り合いの内の誰かの悪戯だろう……こんな悪戯するのは、あのアホな男友達のあいつか、あるいは部活の先輩なのか……。  ともかくも、それが本物の都市伝説の〝黒ヤギさん〟からではないと悟ったわたしは、密かに安堵するとともに背筋の薄ら寒さから解放された。 「それでも、ま、一応……」  とはいえ、やはり放っておくのはなんだか気持ちが悪かったので、わたしは一応、いつもと同じように「さっきの手紙のご用事なあに?」と打ってメッセージを返しておいた。  すると、ゲームのルールどおり一分と経つ前にすぐさま「さっきの手紙のご用事なあに?」と返信が返ってくる。 「もう、めんどくさいなあ……」  そう思いつつもゲームは始まってしまったので、わたしは仕方なく机の下でこっそりスマホを弄ると、不毛なメッセージの応酬をしばらくの間繰り返した。  ――キーンコーンカーンコーン…! 「……ん? もうそんな時間か? よーし、今日はここまで。ちゃんと家で復習しとくようにな」  しかし、終業のチャイムが鳴り、慌てて話をまとめる教師の声とともにその授業が終わりを迎えると、わたしはゲームの続けられない状況へ身を置くこととなる。 「ねえ、次、体育だよ? 早く行かないと遅れるよ?」 「あ、ちょっと待ってよぉ!」  急かして教室を飛び出してゆく友人の言うとおり次は体育の時間であり、スマホを弄るどころか、手元に置いておくことすらできないのだ。  そんなわけで、みんな、体育になると勝ち負けにこだわらず、ゲームは自然とお流れになるのが暗黙の了解となっている。  もちろん、わたしもご多聞に漏れず、最初は返信できないことが少々気になってはいたものの、体育でやったバドミントンで夢中に汗を流す内に、〝黒ヤギさん〟からのメッセージのことなどすっかり忘れてしまった。  ところが、体を動かした後の心地よい気だるさと爽快感は、思ったよりも長続きしなかった……。
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