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「――ハァ……よかった。やっぱりただの悪戯だったのかな?」
翌朝、おそるおそるポストを覗いてみると、中には新聞が突っ込まれていただけで、〝黒ヤギさん〟からの手紙は届いていない。
やはり、知り合いの誰かによる手の込んだ悪戯なのではないかと思い返すようになったわたしは、それまでの恐怖も嘘のように消え失せ、いつものように学校へと向かった。
………………しかし。
「…………!」
何事もなくその日を終え、学校から帰って一応、ポストを確認してみたわたしは、そこにあった封筒を見て愕然とする。
またしても、「黒山羊」と差出人の書かれた、切手・消印なしのわたし宛の手紙が入っていたのである。
「う、うそ……嘘でしょう!?」
本当に誰かの悪戯じゃないの!? あの都市伝説は本当に本当のことだったっていうの!?
悪戯だと安心したのも束の間、再び恐怖が脳内を満し、わたしの精神は恐慌状態に陥ってしまう……ともかくも、この手紙も早く食べてしまわなくてはならない……。
「……はぐっ……もぐ…もぐ……ゴクン……」
前回同様、わたしは台所へ駆け込むと、急いでその手紙をヤギのように食べた。
「…ケホ…ケホ……ハァ……ハァ……で、でも、返事を出さないとまた……」
異物を飲み込んだ後味の悪さにえづきながら心配したとおり、返事を出す術を知らないわたしのもとには翌日もその翌日もさらにそのまた翌日も、〝黒ヤギさん〟からのお手紙が毎日着くようになった。
「――ハァ……ハァ……はぐっ……もぐ…んぐ……ゴクン……」
「――……よ、よし……はむっ……んぐ…んぐ……ゴクン……」
「――もう……いや……はぐうっ……もぐ…もぐ……んぐ……んぐ……ゴクン……」
その度に得体の知れない恐怖に追い立てられ、わたしは嫌々ながらもその手紙を咀嚼して飲み込む。
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