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黒ヤギさんからお手紙着いた
今、わたし達の学校の女子の間では〝やぎさんゆうびんゲーム〟というのが流行っている。
童謡「やぎさんゆうびん」――あの「白ヤギさんからお手紙着いた~」という歌をもとにしたもので、実際の手紙ではなく、SNSのメッセージ機能を使って行うゲームだ。
そのルールというのはこんな感じである。
まず、最初に始める者が「白ヤギさんから黒ヤギさんへ」とだけ書いたメッセージを相手に送りつける。
それを受け取った者は、歌の「黒ヤギさんたら読まずに食べた」という設定のとおり、仕方がないので「さっきの手紙のご用事なあに?」と書いてすぐに返信をしなければならず、その返信を受け取った方も「白ヤギさんたら読まずに食べた」ので、また「さっきの手紙のご用事なあに?」と返信をし、受け取った側もまた返信……と、そのやりとりを延々と繰り返してゆく。
そして、一分以上返信しなかった方が負け……という、まあ、はっきり言ってなんの生産性もない、ほんとにただの暇潰し的なゲームだ。
加えてそのルール上、一分以内の間に急いで返信しなければならないので、最初はおもしろがってやってみるものの、その内、段々とただただ返信がめんどくさくなってくる。
だったら無視すればいいじゃん! と思うかもしれないが、これがまた負けるのが嫌なのでなんか返信しなければならない強迫観念に駆られ、嫌々ながらも可能な限りゲームを続けてしまう……こうなると、最早、ゲームというよりもむしろ嫌がらせの手段である。
また、そうした状況なので家や外出先はもちろん、授業中もずっとスマホを弄っているような現象が生まれ、この頃では親や教師の間で少々問題視する声も出てきていたりもする。
とまあ、そんなこんなで取るに足らない、まったくもってくだらないゲームなのであるが……これには一つ、奇妙な都市伝説が密かに囁かれていたりもした。
ゲームをしていると、ある日、「黒ヤギさんから白ヤギさんへ」というメッセージが見知らぬIDから届くというのだ。
ルールでは「白ヤギさんから黒ヤギさんへ」で始めるので、〝黒ヤギさん〟から始まること自体、普通ならばまずありえない。
もっとも、ただ白ヤギと黒ヤギを間違えただけということもありえなくはないが、とにかくこれも「さっきの手紙のご用事なあに?」とすぐさま一分以内に返信しなければならないルールは同じだ。
でも、一分以内に返信できなかった時のペナルティが、こちらでは少々異なってくる……。
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