16人が本棚に入れています
本棚に追加
だが、次の瞬間。
バキッ、と乾いた音がして、芙由香の体は雪が積もった地面に投げ出される。彼女がロープをかけた桜の枝が折れたのだった。枝に積もった雪の重みも影響したのかもしれない。
「芙由香!……はぁっ、はぁっ……」
息が切れて、俺はそれ以上しゃべれなかった。
俺が近づいても、芙由香は地面に横たわったまま目を開けようとしない。首のロープは十分緩んでいる。俺は彼女の右手首を取る。脈はある。呼吸もしているようだ。気を失っているだけか……
良かった……
安心すると同時に、俺もヘタヘタと地面に座り込んでしまった。
だが、いつまでも彼女をこのままにしてはおけない。間違いなく風邪を引いてしまう。
「芙由香! しっかりしろ!」
ようやく息が整った俺は芙由香の両肩を掴んで揺さぶる。しばらくして彼女は目を開いた。
「明尚……? なんで、ここに……」
「お前が遺書を残して消えた、っておばさんから聞いたんだよ。それで、もしかしたら、ここかも、って思って……」
「なんで、私がここにいるって思ったの?」
……しまった。口が滑った。ええい、正直に話しちまえ。
「それは……前に、お前とハル兄がここで一緒にいたのを……見たから……」
「そう……すごいカンだね。だけど……ほっといて欲しかった。私は死にたいの。だから……何もしないで、死なせて欲しい」
最初のコメントを投稿しよう!