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「……お前に、現実を見て欲しかったんだ」
とうとう、俺は言ってしまった。
「え?」
「お前が好きだったハル兄は、もうどこにもいないんだ。お前にそれを分かってもらいたかった。そして、ハル兄をあきらめて前に進んで欲しかった。だから俺はあの手紙を届けたんだ」
「私はそんな現実なんか見たくない! ハル兄のいない、そんな現実になんて……生きていたくない……」
そう言って芙由香はうつむく。そんな彼女を、俺は呆然と見つめることしか出来なかった。
死にたがっている彼女に対して、何を言えばいいのか。全く分からない。そんな自分が不甲斐なくて仕方ない。
でも……
もし芙由香が死んだら、俺は一体どうなってしまうのだろう。
そんなの決まってる。今の俺に出来ることは……それを、彼女にぶつけることしかない。
「芙由香」
「え?」
「そんなに生きていたくないんならさ、その前に、俺を……殺してくれ」
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