守秘義務違反

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「ええっ!」  そう言ったきり、彼女は言葉を失う。 「そのロープで俺の首を絞めてさ、殺してくれ。俺があの手紙を届けたせいでお前が死ぬなんて……そんなの……俺は耐えられない。だから……俺も死ぬ。お前になら、俺は喜んで殺されるからさ……」 「喜んで殺される……? どうして……?」 「俺はお前のことが、ずっと好きだったから」 「……!」  どさくさ紛れに告ってしまったが、気にしてる場合じゃない。 「お前に殺されるのなら、本望だよ。だから……殺してくれ」 「そんなの……できるわけないよ」芙由香が訥々(とつとつ)と言う。「明尚を殺すなんて……私には無理だよ……」 「分かった。それじゃ、俺が先に首吊って死ぬから、お前はそこで見ててくれ」 「……!」芙由香の目が丸くなる。「やだ! やめてよ……私、明尚が死ぬところなんて、見たくないよ……怖いよ……」 「お前はさっき、俺の目の前でそれをやろうとしたじゃねえか!」  思わず俺は怒鳴ってしまう。 「!」芙由香の体が、ビクリ、と震えた。 「俺だってめっちゃ怖かったよ! なんなんだよ、お前は俺が死ぬのは怖くて、お前自身が死ぬのは怖くねえのかよ! わけわかんねえよ!」 「……」  芙由香はうつむいて、黙り込んでしまった。
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