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俺の連絡で、警察や消防を巻き込んだ大規模な捜索が、開始される寸前で中止となった。芙由香の家に俺が彼女を連れ帰ると、彼女の母親が号泣しながら彼女にしがみついた。芙由香も泣いていた。俺も思わずもらい泣きしそうになってしまった。
配達バイクの業務外使用と、配達をサボって二子山に向かったことは、人命救助の手柄と相殺され、俺には特におとがめなし、とされた。
帰宅した俺は自分の部屋で、二子山からの帰り際に芙由香と交わした会話を思い出していた。
"いい男だったらここにいるだろ、って言わないんだね、明尚……"
こいつ……俺が言いたくても言えなかったことを……
"言えるわけねえだろ。俺は自分がハル兄以上にいい男だなんて、全然思えないからな"
そう言うと、彼女はまた、かすかに笑った。
"でもさ、そういうのって、明尚自身が決めることじゃないと思うよ"
……。
これって、どういう意味なんだ……?
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