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二日後。
いつものように俺が芙由香の家に郵便を配達しに来ると、いきなり玄関が開いた。
「明尚」
芙由香だった。顔色がかなり良くなっている。表情も穏やかになったし、瞳にも輝きが戻った。
「これ……」
そう言って、彼女は白い封筒を差し出す。
「ちょっと待って。俺、個人宅は配達オンリーなんだ。集荷はしないから、自分でポストに投函してくれよ」
「もう……違うって。ちゃんと宛名を見てよ」
「……え?」
言われて俺は封筒をしげしげと見る。切手は貼られてない。あて先の住所も書かれてない。書いてあるのは、宛名だけだ。
田島 明尚 様
「!」
思わず俺は芙由香の顔を見つめる。
「家に帰ってから、読んでね」
そう言って彼女は、柔らかく笑った。
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