守秘義務違反

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 バイトを終えて家に帰ってきても、俺の心は沈んだままだった。  今頃芙由香は返ってきた手紙を見て、ショックを受けているに違いない。だからと言って俺からは何もできない。それをしてしまえば法律違反になるのだ。  郵便法第八条、第二項。 「郵便の業務に従事する者は、在職中郵便物に関して知り得た他人の秘密を守らなければならない。その職を退いた後においても、同様とする。」  だから俺はこの一件を、彼女はおろか、他の誰にも相談することはできない。  せめて芙由香の方から相談してもらえれば……と思っているのだが、彼女からの連絡は全くなかった。結局、俺なんて彼女にとってはその程度の存在でしかなかったのだ。それを思い知らされた俺は、さらに落ち込んでいた。 ---
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