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翌朝。
ちらほらと雪が舞っていたが、まだ積もるほどではない。俺が配達する範囲ならチェーンを付けなくても大丈夫だろう。
いつものように配達をこなし、芙由香の家に郵便を配ろうとしたときだった。
いきなり玄関から、血相を変えた彼女の母親が飛び出してきた。
「おばさん、どうしたんですか?」
俺が声をかけると、
「あ、明尚ちゃん! 芙由香が行きそうなところ、分からない?」
芙由香の母親はそう言って、俺の腕を掴む。
「な、何があったんですか?」
俺がそう言った瞬間、彼女は泣き崩れた。
「ちょ、ちょっと、どうしたんですか、おばさん」
号泣しながら芙由香の母親は、一枚の便せんを差し出す。それを開いた俺は、顔がみるみる青ざめていくのが自分でも分かった。
それは、遺書だった。
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