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(1)プロローグ
その日は、雨が降っていた。梅雨を迎えるこの時期、周りの紫陽花が美しく咲く。はじめはどんよりとした雲が空を覆い、長い雨を降らせていたが、徐々に雲が薄くなっていった。
雲の間から日の光がわずかにこぼれ、降る雨に反射し、なお一層景色を輝かせる。そういった中で人が風情を感じるのは、歴史からみると一個人の寿命がとてつもなく短いスパンであるからだろう。
しかしながら、川が枯れ、寺が造られ、空から火薬が降ってくるなど世の風景を見てきた男からすると、季節ましてや天気は当然と不変なものに近似してしまう。
・・・どのくらい経つのだろう。そして、あとどれくらいこうしていなければならないのだろう。
空を見上げる、一切の希望を持てず幾度となく繰り返してきた行動。
誰も彼の名を呼ぶことはなくなった。かつて、知る者は彼をこう呼んだ。
六波羅 忍
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