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「月冴、大事なもの忘れてる。一番のさっぷらーいず!」
亮平の台詞に、弾かれたように月冴の背がシャンと伸びる。いますでに充足感を味わっているのに、まだなにかあるのだろうか。
「あのね、尚斗。もう一つ渡したいものがあるんだ」
「わりと十分すぎるほど貰っちまってる気がすんだけど?」
「また別物っていうか……やっぱりこれがないとはじまらないっていうか」
「はいはーい、ちゅーもーく」
言葉を濁す月冴の、キラキラ輝く金糸雀色の髪を見ながら首を傾げると、今度は昭彦が声をあげた。
「誕生日って言ったらコレでしょ」
歳の数を表す数字のロウソクに、小さく明かりが灯る。照らされて暗闇に浮かび上がる、本を模した──。
「尚斗、誕生日おめでとう」
三人の声が合わさる。
それは両手を合わせて丁度いいくらいの大きさのケーキだった。
俺が好きな本の形をしていて、たくさんのフルーツや淡い色で染められたクリームが飾られた、バースデーケーキ。
「まさかこれも?」
「へへっ……頑張っちゃった」
そう言って照れたように笑う──大切な人。
誕生日なんて来なければいいと──そう思っていた。
大切な人がいなくなってしまう、そんな日なら。
けれど──けれど、いまは。
大切な人が傍にいて、自分がこの世に生まれた日を、祝ってくれている。
出逢えてよかったと──そう言って笑ってくれる。
「ありがとう」
今年からやっと──自分の誕生日が好きになれそうだ。
Happy Birthday,NAOTO
(誕生日おめでとう)
I always hope your happiness. A year full of love.
(あなたの幸せを常に願っています。愛にあふれた一年を)
【尚斗と誕生日とプレゼント_Fin】
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