尚斗と誕生日とプレゼント~After Episode~

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尚斗と誕生日とプレゼント~After Episode~

「ところで、このケーキどうする?」 「母さんが、〝せっかくだしみんなで食べてらっしゃい♡〟って紙皿と使い捨てのフォーク持たせてくれたけど」  広場にあるベンチの上に置いたケーキを見つめた昭彦の素朴な疑問に、月冴がそう返すと、 「マジで!? じゃあ深夜のお茶会と洒落込みますかぁ!」  小さな拍手と同時にそう歓喜の声を上げたのは亮平だった。 「ちょっとー、亮平のために作ったんじゃないんですけどー」 「ソレは知ってる。尚斗、お前も食いたいだろ? 月冴のケーキ! なんたって誕生日だもんな!?」  不満そうな声を漏らす月冴を軽く往なした亮平から、嬉々とした声をかけられ、口をきゅっと引き結ぶ。  朔夜から〝用が済んだらとっとと帰るように言え〟と言われはしたが、俺のために時間を使い、ここまで手の込んだことをしてもらったのだ。  こんなことをしてくれる〝友達〟は──この先一生現れないかもしれない。 「そうだな……せっかくの誕生日だもんな」 「さっすがー! 話わかるぅ♪」 「やったやったー」といまにも踊りださん勢いで喜ぶ亮平を横目に、小さな溜息をつく。  ひとりで読書をする時間はもちろん好きだが、こういう賑やかな時間も悪くないと思える。きっと、彼らや月冴と出逢えたことで変われた部分だろう。 「さて、どう切り分けよう?」──神妙な顔を突き合わせてケーキを覗き込んでいる三人を暫し見つめてから、 「俺、なんか飲むモン買ってくるわ。適当でいいよな?」  そう言ってその場をあとにした。
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