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公園を出てすぐのところにある自動販売機は、煌々と輝いて、暗闇に慣れた双眸を容赦なく灼いてくる。眩しさに目を細めながら商品を選ぼうとボタンに指を翳したところで隣にもうひとつ、影が並んだ。
「俺、あったかいミルクティーがいいなぁ」
「……ケーキを切り分けてたんじゃなかったのか?」
「そんなの、あの二人でもできるよ。もしかしたら4等分以上になってるかもしれないけど」
「……違いねぇや」
俺を追ってきた月冴と並んで、顔を見合わすわけでもなく声を殺して笑いあった。
「なぁ」
「ん?」
「なんで〝朔夜さん〟に頼んだんだ? 俺の呼び出し。お前が呼ぶなら、いつだって、何時だって出てくるのに」
ガコン──ひとつ目の缶が落ちる、重い音が響く。
「えーっと、なにも特別なことはなくてね。実は、プレゼント用の生地を買いに行った時、偶然街中で秋月先輩に会ったんだ。それで、尚斗が誕生日でって話をしたら、ちょっと付き合えって言われて」
しゃがんだ姿勢から腕を伸ばし、取出口から落ちてきた缶を拾い上げる月冴を上から見下ろす。
「もしかして……お前が選んだの?」
「ううん、俺はあくまでも相談されただけっていうか。尚斗はなにが好きなんだ、食えねぇモンとかあんのか、って。さすがに〝偏食気味です〟とは言えなくて〝コーヒーが好きですよ〟って教えただけ」
「……悪かったな、答えに困るくらい偏食で」
ガコン──ふたつ目の缶が落ちる音が響く。「ふふっ」と笑い声を漏らした月冴が、取出口のプレートを持ち上げて缶を拾った。
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