尚斗と誕生日とプレゼント

2/10
前へ
/14ページ
次へ
✕✕年後 10月6日  日付が変わるまで、あと1時間。そんな時分に、一通のメッセージが届いた。 『まだ起きてるか』  その簡素な一文の送り主は朔夜だった。  日々夜遅くまでアルバイトをしている朔夜が、メッセージとはいえ、連絡を寄越してくるのは相当に稀である。  ベッドにうつ伏せ状態でいたのを上体を起こして、読みさしの小説を枕の脇に避け、返信を打ち込む。 「絶賛読書中、っと」  簡素なメッセージに手の込んだ返信は不要だ。こちらも簡素な一文を送る。送ったメッセージウインドウの横にチェックがついた次の瞬間、手にしていたスマホが震えた。  よくよくディスプレイを見れば着信画面が表示されている。相手はいましがたまでやり取りをしていた朔夜である。 「……はい」 『……おぅ』  ぶっきらぼうな声。  人によっては機嫌が悪そうだと受け取りそうな声色も、朔夜にとっての〝普通〟だ。 「珍しいですね、電話なんて」 『早ぇからな、この方が。……お前、いま家から出られるか?』 「……いまから、ですか?」  思わず間の抜けた声が漏れる。  なにせ時間が時間だ、出られないわけではないが、あまりに唐突な誘いに面食らっていると、 『家の前にいっから、出てこいよ』  朔夜から追い打ちとも言うべき言葉がかけられた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加