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〝あの一件〟以来、朔夜と関わるとなにかと頭を触られることが多い。
手のかかる弟分──そんな風に思っているのだろうか。兄弟なぞいたことがないから、わからないが。
「で。俺はこのあとどこに行けばいいんですか?」
「近所に公園があんだろ、そこだと。もう時間が時間だからな、送ってやる」
「俺、一応男なんだけど?」
「月冴が心配してたぞ、尚斗は美人だからとかなんとか」
「マジすか」
「心配されないよりはいいだろ」
「行くぞ」──その言葉に引かれるように、朔夜と連れ立って指定された公園へと向かう。
公園まではゆっくり歩いても五分ほどの距離だ。さして会話もないまま公園の入口に辿り着いた。
「じゃあな。オレは帰る」
「なんかすいません、付き合わせて」
「お前が謝ることじゃねぇだろ。アイツらにも用が済んだらとっとと帰れっつっとけ」
「そうですね、言っときます」
「じゃあ」──そう言って車両進入禁止のためにはめ込まれている黄色のポールに手をかけた時だった。
「尚斗」
呼び止められて振り返ると同時に、頭の上になにか当たる感触がした。
朔夜の手とは違う、軽くて無機質な〝物〟の感触だ。
髪に触れて、乾いた音を鳴らす。視線を上げると、いつもと変わらない表情の朔夜と視線が交わった。
「……なに?」
「やる。まぁたいしたもんじゃねぇけど。要らねぇなら──」
「いる」
食い気味に返事をして、頭に乗せられた包みを手に取る。
ブルー地の包装紙には、猫のようなキャラクターがプリントされていて、十字にかかった黄色のリボンにはうっすら星の模様が入っている。
ファンシー雑貨店でよくある〝女子向けラッピングの定番〟──これを朔夜がどんな顔をして頼んだのか……そんなことを思うと、また口元が微笑ってしまう。その気配に気づいたのか、朔夜が小さく舌打ちをした。
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