尚斗と誕生日とプレゼント

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「……尚斗。これ、俺から」  話の区切りを見計らうように月冴がおずおずと手にしていたものを差し出してきた。昭彦たちに貰ったものと違い、月冴のくれたプレゼントは薄くて小さめだ。品のある包装紙でラッピングされ、角に派手すぎないリボンシールが貼られている。手にしてみた感じから推察するに、ブックカバーかなにかだろうか。 「もしかして、ブックカバー?」 「うん。いつも使ってるの、だいぶ褪せて汚れてきてたから」  少しはにかんだような、照れた笑いを浮かべた月冴が、もじもじと指先を絡め合わせる。好きで使っている俺ですら頓着しない、些細な部分に気がついてくれる。そんな繊細な一面を新たに垣間見て、心の中で音が弾ける。 「よく見てるな」 「そりゃ……好きな人のことだしね。母さんに付き合ってもらって、布選んで型紙作って俺が縫ったの」 「ほんと?」 「うん。気に入ってくれるといいなー……なんて」  月冴はどんな想いで、どんな表情をして、この一枚を仕立ててくれたのだろう。  ()を想いながら、ひと針ひと針を丁寧に、心を込めて仕立てられるように──布を選び、糸を選び、生地に鋏を、針をいれたのだろうか。  そんなことを思うだけで──心の奥底からじんわりと熱を帯びた想いが、溢れてくる。 「気に入らないなんて……そんなことあるわけねぇよ。ありがと、大事にする」  いますぐ彼のことを抱きしめたい衝動に駆られる。両手が塞がっていて叶わないのがもどかしい。それでも、月冴は俺の言葉を聞いて、やっぱり照れたように頬を染めて──笑った。
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