優しい人

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母も、篤史も 胡桃が話し始めるまで、待ってくれた。 「…今日、篤史の家で… アルバムを見た。 篤史がおじいちゃんおばあちゃんをとっても大事に思ってるのが、わかった。 それを見ていて、思い出した。 私」 「……」 母は黙って聞いている。 篤史も胡桃をじっと見ていた。 「私…可愛がって貰ってた…! なのに、おばあちゃんのこと…邪魔みたいに思って、嫌って… 家族のことも…なんだかバカみたいに思えて、反抗して、大事に出来てなくて…」 嗚咽しながら矢継ぎ早に話す胡桃の両目からは、パタパタっと大粒の涙が落ちる。 母と、篤史が短く息を吐いた。 「私っ…! 最低な、人間で… 大事にされる…価値も…なくて… だから… ホントに、ごめん…なさい…」 胡桃が俯くと、長い髪が顔を隠す。 胡桃は頬を拭うこともせず、涙を流した。 背中には暖かい篤史の手の平。 そっと胡桃をさする、優しい手… 母が、ふーっと長くため息をついた。 「そっか」 おもむろに母は立ち上がると、パンパンっと手を叩いた。 「よし、鍋焼きうどん作ろ。 篤史君も食べていきなさい」 言うが早いか、母は台所に向かう。 何か言われるかと思っていたのに、肩透かしを食らった気分の胡桃に、母は言った。 「チャチャッと20分で作るから。篤史君、おうちの人が心配したらいけないから連絡して。 胡桃、それまで篤史君と2人で、自分の部屋で話しなさい」
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