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「母さんの方のじーちゃんばーちゃん、もう亡くなっててさ。すげー可愛がってもらった。
ほら、よく『親孝行したい時には親はなし』って言うじゃん?
親孝行は、きっとまだもう少し出来るだろうけど、じーちゃんばーちゃん孝行は、今でも出来るか出来ないかわからない。
絶対、生きててほしいよ。
もうすぐ俺が18歳になった時、じーちゃんばーちゃんが生きていてくれてるなら、顔見たいし、俺を見てほしいし、俺っていう孫がいるんだって、安心してほしいし
…胡桃にも会ってほしいんだ。
まあ、もしかしたら向こうは俺のことなんかすっかり忘れてるかもしれないけどさ?
その時はその時。」
「…そう、なんだ…」
篤史のキラキラした瞳に、胡桃の胸がチクチクした。
篤史は、…優しい。
それに比べて、私ーーは…
口の中が苦いみたいに感じて、お茶を含んだ。
胡桃の脳裏によぎる、淡い記憶。
「この写真、見る限り、絶対可愛がってもらってたと思うんだよねー」
微笑む篤史。
胡桃も写真に目を落とす。
赤ちゃんの篤史に、離乳食を食べさせている。笑ってーー楽しそうに。
赤ちゃんの篤史を、ベビーバスに入れている。とっても幸せそうにーー
確かに、篤史を中心に、皆笑ってーー全部の写真から愛が溢れていたーー
胡桃は息がうまく出来なかった。
「篤史…ごめ…
ちょっと、今日は、帰る…」
「えっ?」
篤史がびっくりして、胡桃を見た。
「どうした?具合、悪い?」
胡桃は首を振る。
言葉にすると、泣きそうだった。
「…今度、ちゃんと話す…今日は、ごめん」
「そか、わかった。駅まで送るよ」
篤史は上着を手に取った。
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