病院

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ーーごめんね ごめんなさい。 もっと早く来ればよかった。ね。 おばあちゃんが、私をわかる時に。 おばあちゃん、ごめん。 本当に、ごめんね。 可愛がってくれたのに。 愛してくれたのに。 邪険にするなんて、人間としてどうかと自分でも思う。 最低。私は、最低だ…近づきたくなくて、自分のことしか、考えてなかった… 怖かった。おばあちゃんが、変わっていくのが。 でも… おばあちゃん…。おばあちゃん…。 許して、おばあちゃん… 胡桃は嗚咽が止まらなくなった。 声が漏れないように必死で抑えるけれど、時折漏れる、しゃっくり。 鼻が詰まって、口を開いて、震える肩で息をした。ーー涙がいつまでも止まらなかったーー 「…」 「…いい子、だねえ…」 胡桃は驚いた。 シーツに顔を埋める自分の頭に、感じる軽い重み。 手が、よしよし、と胡桃の頭を撫でている。 とても、とても優しい手ーー 「大丈夫だよ…胡桃ちゃんは、とっても、いい子だ いい子だから、幸せになれるんだ」 嗄れた、小さな、か細い声。 胡桃はゆっくり顔を上げた。 祖母と目が合う。 今度こそ、祖母とはっきり目が合った。 「きれいになったね、胡桃ちゃん もう、お嫁さんになれそうだ」 しわしわのシミだらけの顔が、胡桃を見て、微笑んでいた。 「…お、ば…ちゃ…」 「胡桃ちゃんはいい子だよ…」 胡桃の目から、さらに涙が吹きだした。
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